それは暑い夏のこと…。
サスケとイタチは珍しく揃って任務が無かった為、家の縁側でミコトの切り分けてくれたスイカを食べていた。
兄弟隣同士に座り、水を張った桶に足をつける。
風鈴の涼やかな音も混じり、とても風流だ。

「…サスケ、あまり食べ過ぎると腹を壊す」

ふと、右に座るサスケを見たイタチは彼の横で山積みになったスイカの皮を見て、一瞬無言になる。ざっと見だが五、六枚だろうか。

けれど、当の本人はイタチが注意をしてくれているというのに食べる手と口を止めない。また一つ食べ終わり、新たなスイカを手に取るのだ。

「………」

黙々とスイカを食べるサスケに溜め息を付き、イタチは諦めたように食べかけのスイカを再び口にした。

こうなったサスケを無理矢理制止させると、彼が不機嫌になることを知っているから。


それから数分、どちらも喋らずスイカを食べる時間が続いた。

いい加減サスケを止めなければ…、と一切れのスイカを食べ終えたイタチが意気込む。

「サスケ…」

チラッとイタチに目線だけを向けたサスケ。それを見たイタチはチャンスとばかりに制止をかけようとした

…その時だった。



ぼふんっ!!
という効果音と共に、目の前の庭が煙に包まれる。

「!?」
「っ!?」

イタチとサスケは驚きながらもクナイを構え、煙を見据える。その状態で数秒、だが攻撃を仕掛けてくる気配がない。

そんな不可解な目の前のモノに疑問符を飛ばす二人。

と、煙が風に流されたお陰でその正体が全貌を現した。


「…こ、ここは?」

そこに立っていたのはリーゼントに学ラン姿の男。
見たことも無い格好をしている男に、イタチは警戒心を露わにする。

けれども、サスケは違った。軽く目を見開いてから、ポツリと呟くように言葉を発した。

「…草壁?」

そう、煙の中に居たのは並盛中学風紀副委員長である草壁哲也だったのだ。

草壁は己の名前を呼んだサスケに視線を向ける。

「…あ、あの…何故名前を…?」

困惑した表情で問う草壁に、サスケはブチッとキレた。

「へえ…僕のことが分からないなんて、副委員長として…いや、風紀委員として失格だよ」

そしてサスケは静かに草壁の元へ歩いて行き、トンファーで彼を殴りつけた。

「ぐはっ!?」

トンファーを叩きつけられた草壁は、軽く吹っ飛び地面へ伏せる。
頭を打ったのか草壁の視界は歪み、己を殴った相手が、自分の良く知る相手と重なる。

漆黒の髪を靡かせ、銀色のトンファーで殴る。そして彼の口癖は……

「咬み殺すよ」(…咬み殺す)

再び重なった、影。


「い、委員長…?」
「気付くのが遅いよ、草壁」

見た目が彼…雲雀恭弥ではない。でも確かに彼は雲雀恭弥だ。

草壁は目を見開き、痛む身体を起こす。
そして見上げるのだ、委員長を。

「これはどういう…」

そして問うのだ、何故こんなことになっているのかを。
だが、返ってきたのは予想だにしない言葉だった。

「いいかい、副委員長。世の中には知らなくて良いこともあるんだよ」
「…は?」

思わず間抜けな顔で聞き返してしまう草壁。
当然、そのことに目の前の委員長は苛つくわけで…。

「何?その口の利き方」

ギラリ、と光った瞳で草壁を見据える。
これはまずいと草壁は冷や汗を流す。

一触即発な空気が漂うその時、今まで黙っていた彼が二人の間に入った。

「サスケ、一旦落ち着け。この子は知り合いなのか?」

イタチだ。彼はサスケの肩に手を置き、落ち着くように諭す。
それに対してサスケは不満を露わにするが、イタチのもう一押し「許せ、サスケ」もありトンファーをしまった。

その様子を見ていて草壁は危うく気絶しそうになる。

「(…い、委員長がっ…委員長が!!)」

それしか考えられないのだ。

「サスケ、それでこの子は知り合いか?」
「…まあね」
「それなのに殴ったのか…全く。君、サスケがすまなかった」

ぐるぐると頭の中を駆け巡っていた雲雀の変化だったが、イタチが話し掛けてきたことによってそのループから抜け出せた草壁。

「…あ、い、いえ。それより委員長…サスケとは…」
「ああ、今の僕の名前だよ。因みにこの人は兄のイタチ」

へ、へぇ…お兄さんですか。お兄さ……は!?
そして草壁は再びループへと嵌まって行くのだった。


(サスケ…どうしたんだ、この子)
(さあ?草壁だし気にしなくていいよ。気が付いたらきっといなくなってるし)
(恭さんが恭さんじゃなくてお兄さんがいて言う事聞いてて…っ!!)


草壁は一時間後に帰ることが出来たが、彼が此方へ来た理由は分かっていない。
十年バズーカの誤射が一番有力な説だが、そのバズーカの持ち主と草壁が遭遇し、砲弾を当てることは不可能に近い。
その為、今回の事件は迷宮入りであろう。

ただ一つ言えることは、サスケもサスケなりに草壁に会えたことが嬉しかったのか、雲雀恭弥特有の暴力的愛情を草壁が帰るまで見せていたということだ。
…決してドメスティックバイオレンスではない。

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