上忍カカシ率いる第七班は伝説の三忍の一人、大蛇丸と対峙していた。
己の背丈の約五倍ある崖の上から腕を組んで第七班を見下ろす大蛇丸。
その口元は三日月を描いている。

皆がクナイを構え警戒する中、一人の少年がその空気を壊すかのように叫んだ。

「大蛇丸さまぁあああ!」

うずまきナルトだ。彼は構えを解きシュンッと一瞬で大蛇丸の元へ移動し、彼の腰に抱き付いた。

「なっ、ナルト!?」
「お前…っ!」
「アンタなんでっ!?」

目を見開くカカシ、サスケ、サクラ。
彼等の声と視線は無視して、ナルトは満面の笑みを大蛇丸に向ける。

「やっと会えたってば!大蛇丸様全然連絡くれねーんだもん!」

待ちくたびれたってばよー!!と無垢な笑顔で大蛇丸に抱きつく腕を強める。
それに対して大蛇丸もフフッ…と笑い、ナルトの頭を軽く撫でる。

「ナルト…お前!」

どうして。
そんな思いでカカシはナルトを見る。目の前の光景を信じたくないのだ。
自分の教え子で、先生の子供であるナルトが大蛇丸に…自分さえ見たことがない笑顔を見せていることが。あちら側に居ることが。

だがカカシのそんな葛藤を知らぬ顔で流し、ナルトは大蛇丸の隣に立ち仲間を見下ろす。

「大蛇丸様、こいつらどうすんだ?」

そして、その言葉にカカシ達七班は凍り付いた。

「な、ナルト?アンタ…なに言って」

冗談はよしてよ…。
分かっているけど分かっていない、そんな様子で無理に笑うサクラに目を細めるナルト。
だがそれは決して心揺らいだことからの動作では無く、あくまでも蔑むものだった。

「ごめんな、サクラちゃん」

口では謝っているのに、そこに感情なんて一握りも有りはしなかった。

「オレが四代目火影の子供だからって、一瞬でも疑わなかったのが悪いんだ。九尾の人柱力って理由でずっと周りから嫌われて来たオレが、里を裏切るなんて分かりきってたことだろ?」

自傷しながらははっと笑ったナルトの肩を抱き締めるように大蛇丸は腕を回す。
それに気付いたナルトは大蛇丸に笑みを浮かべた。

「でも、大蛇丸様は違ったってば。 オレをナルトとして受け入れてくれたんだっ!」
「それは三代目火影様だって…!」
「じいちゃんが、なんでオレがみんなから嫌われているのか…教えてくれたことがあったか?なかったってば!!」

例えそれがオレを守る為だったとしてもっオレは、自分が嫌われてる理由が分からなくて…ずっとココが、痛かった…っ



ナルトはギュッと心臓を掴むように服を握り締める。
その姿を見てカカシは眉を寄せて下を向き、サクラは瞳に涙を溜め、サスケはそんなナルトを見つめることしか出来ないでいた。



「ナルト君、そろそろ行きましょう。今日のところは帰るのが最優先だからね。何もしなくていいわ」
「分かったってばよ」

大蛇丸がそっとナルトに回していた腕を解く。
そしてその腕を今度は高く上げ、手をナルトの頭に置いた。
優しく髪を梳いてくれる大蛇丸。その手つきにナルトはふにゃっとした笑顔を見せる。

紅潮した頬を緩ませるナルトと大蛇丸は本当の親子のように見え、それを目の当たりにした七班の三人は最早言葉も出せなかった。


「さぁ、行くわよ」
「…へへっ」

しゅたっと一瞬にして消えてしまった二人を引き留められる者など、存在しなかった。



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