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ラケットのグリップをしっかりと握ってネットを挟んでコートの向こう側にいる相手を見据えた。 一度息を吐き出して、目を閉じて。 気合いを入れ直す様に息を吸い込みながら目を開いた花音。 (もう2週間経ったのか……) ふ、とそんなことを思った。 あの日からもう2週間。 花音にとってこの2週間はあっと言う間だった。 練習に慣れる為に人一倍の練習時間。 ほぼ毎日入っているシャッフルマッチ。 練習後に行う自主練習。 人一倍気を使っている練習前後のストレッチ。 いつもなら当たり前のように出来ていることでも不慣れな環境ではいつもより時間がかかる。 全く知らない人に話しかけられることもあり、部屋に帰ると死んだように眠る花音の毎日は目まぐるしく回っていた。知り合いがどんどん増えていくことは純粋に嬉しいから本人としてはよし、と言うところだが。 「仁王、始めるぞ」 「あ、はい」 いけない、ぼーっとしていた。 ネットを挟んでコートの向こう側にいる相手、徳川カズヤに声をかけられ花音は少し意識を外していた自分を叱責する。 「いくぞ」 徳川の真っ直ぐな目が花音を射抜く。 最初はその視線が嫌でたまらなかった花音もこのとてつもない圧力を感じる視線にだいぶ慣れてきた。もう、嫌、と思うことはない。 もう一度息を吐き出して少し腰を屈めてレシーブの構えを取る。 徳川はそんな花音の姿を見ると手にしていたボールを数回バウンドさせトスを上げた。 彼のラケットがトスで上がったボールを捉えた。 「元気良いな、仁王のヤツ」 徳川と花音のラリーを見つめているのは休憩を取っている一軍の面々。 少し離れたコートに花音の姿を見た大曲はそう小さく呟いた。隣にいたデュークも頷く。2人の視線は徳川と花音に熱く注がれていた。 「なんや、アイツ二軍スタートなん?挨拶来とったから期待してんやけどなぁ……」 「本人の希望らしいな。伊達さんに負けたから入れないってコーチ陣に言ったらしい」 「律儀なやっちゃなぁ」 花音の姿を一軍コートではなく二軍コートで見つけた平は苦笑を漏らす。そんな平に向けて苦笑を漏らした不破だったが、内心は平と同じだった。 花音が伊達に非公式とはいえ試合で負けたことはコーチ陣も間違えなく知っているだろう。それでも黒部は花音に一軍への挨拶を指示し、伊達にも連れて行くよう頼んだのだから、彼らは花音の一軍入りを認めているはずだ。ならば二軍に行く必要など無いのだが、花音は負けた自分が一軍に入ることに抵抗を感じたらしく、二軍に籍を置いていた。 そんな姿を見ると思わず2人が苦笑を漏らしたくなるのは仕方の無いことではあった。律儀というのか真面目というのか。 「まぁ、伊達さんに喧嘩吹っかけたのは仁王らしいからな」 「ほんま何やねん。伊達さんに喧嘩吹っかけるとか度胸ありすぎやろ」 不破の言葉に今度は吹き出した平。くるり、とラケットを玩びながら二軍の一番コートで練習を続ける花音をじ、っと見つめた。 綺麗な放物線を描くロブが徳川の左手から放たれる。花音はそれに飛びつくように地面を蹴り、振りかぶった右腕を一気に振り下ろした。 とてつもない速さで空を切ったテニスボールはそのままの勢いでダンッという音をたてて徳川のコートに突き刺さった。跳ね上がって徳川の顔すれすれを抜けていくボール。フェンスに当たったそれは数回小さな音を立てながらバウンドして、動きを止めた。 「なんや、結構強い球打つやん」 「だからここに来たんだろう。パワーもそれなりなはずだ」 「まぁ、そーなんやけど……」 テニスボールを目で追っていた平はぽつり、と呟く。すぐに近くにいた不破に当たり前だ、とでもいうように一刀両断されてしまったが、平の目に花音のスマッシュは強く焼き付いていた。 「早くあがってこーへんかなぁ。やってみたいわぁ仁王花音とは」 「まぁ、早そうだがな」 「なんや、今から楽しみになってきたわ」 ニッと笑った平はぐーっと伸びをする。そして平等院の休憩終了の合図を聞いて2人はコートの中へと戻っていった。 期待を胸に〜アネモネ〜 ーーーーーーーー アネモネ=期待 不破さんと平さんの他の人の呼び方がわからないorz
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