わたしは、わたし。 蒼井満月。 そう、認めてくれる人の存在がすごく、嬉しかったの。 わたしにしか、出せない色もあるの。 それを気づかせてくれて、ありがとう。 弱いなら、強くなればいい 「どうして、上手くいかないんだろ…」 弓道部の全体練習を終えて、1人で自主練習をしていたわたしは思わずそう呟いた。 入部して2ヶ月になるのに、なかなか上手くならない。 あまりに上達しない自分に苛々する。 同じ学年の梓くんは、ブランクがあったのに、そんなことを感じさせないくらい上手い。 それに比べてわたしは、自主練習までしているのに、なかなか矢が的に当たらないのだ。 「わたし、才能ないのかな…」 思わず、そう呟いていた。 何回やっても、的に矢が当たらない。 インターハイの予選も近いのに。 あせればあせるほど、自分の色がわからなくなった。 * * * 「…あれ、満月?もしかして自主練?」 「梓くん…どうしたの?」 「ちょっと、弓に触りたくて。」 梓くんは、そう言って弓を構える。 梓くんの矢は、吸い込まれるように的の中心に当たる。 すごく、惹きつけられる。 「きれい…」 思わず、そう呟いていた。 無駄のない梓くんの動きがとても綺麗で。 「きれいな色だね…。わたしにはない…色。」 「満月にも、色はあるよ。まだ、気づいていないだけで。」 「えっ…?」 「自分に負けてたら、満月の色は出せないよ。初めは、だれでも同じだから。」 「初めは、誰でも同じ…?」 「そうだよ。弱いなら、強くなればいい。その中で満月だけの色が見つかるから。」 梓くんの言葉で、忘れていたことを思い出す。 わたしが弓道を始めたのは、弓道が好きだから。 でも、好きだからこそ、早くうまくなりたくて、空回り。 それでも、忘れちゃいけなかったんだ。 弓道が好きっていう気持ち。 誰かと比べるんじゃなくて、自分は自分だと。 比べる必要はないんだよって。 「ありがとう。今なら、きっとわたしの色を見つけられる!」 「やっぱり、満月は笑っていた方がいいよ。」 「ありがとう!」 弱いなら、強くなればいいの。 少しずつ前に進めばいいの。 end ← 2011.0803 |