「やっぱり、ピアノって難しいな。」


放課後の音楽室で、わたしは1人、部活の課題曲の練習をしていた。
ピアノを始めたのは去年のこと。
颯斗くんのピアノを聞いて、わたしもこの人みたいに弾けるようになりたい、そう思ってはじめたのだ。
でも、まだまだ流れるようには弾けなくて。


「頑張ろうっ!!」


わたしは、そう言ってもう一度ピアノを弾きはじめた。
そうやって、しばらくピアノを弾いていると、颯斗くんに「こんにちは。」と、声をかけられた。


「あっ…颯斗くん…!こんにちは。」

「満月さんは課題曲の練習ですか?」

「うん。まだまだ全然上手く弾けないから…颯斗くんは?」


わたしがそう言うと、颯斗くんは苦笑いをしながら、「忘れ物をしてしまったんです。」と、音楽部のスペースを探しながら言った。
一緒に活動をはじめてから気になりだして、好きになった颯斗くんとの一対一の会話に少し、緊張する。


* * *


「ここの部分がリズム狂っちゃうの。」

「この時は、指をこういう風にくぐらせるといいんですよ。」

「あっ…こうするとやりやすいね!」


何度も同じ場所を上手く弾けないわたしに颯斗くんは分かりやすく教えてくれる。
至近距離で颯斗くんの声が聞こえる。
ドキドキして胸が高鳴る。
今はまだ、流れるようには弾けないけど、この曲が完成する頃には、気持ちを伝えたいと思った。


「この曲が完成したら、聞かせてもらえませんか?」

「うん!」


いつか、この曲が出来た時に、あなたに伝えたい。
だから、待っていてください。


あなたに伝えるうた


2011.07.28







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