▼▲紙ヒコーキ



「何、この折り紙は」
「俺もサッパリだぞ、と」

自分の机を見て第一声がそれだった。
レノも不思議そうに折り紙を見つめる。
いつもはツォンが今日の書類といって多くの報告書の束を見るのだ。
だが、今日は折り紙が多くあるだけだった。

「・・・・・今日は遊んでいい日?」

「折り紙なんかでか、と」

「一体何なんだろうかねえ」


ジッと見つめるとレノの後ろから声がかかる。


「今日は特別ミッションです」

「うっわ!ビックリした!」

「ツォンさん、驚かさないで下さいよ、と」


突然かかった声に二人は驚いた。
予測をしていなかったツォンの登場には気配も読めなかったようだ。


「で、この折り紙は何なのさ」

「今日はこれで輪を作って繋げてもらいたいのです」

「・・・・そういう事は普通の社員の仕事じゃないんですか、と」


レノから不満の声が聞こえる。
ナマエは折り紙を取って折りたたんでいく。
そして、ハサミで切っていく。


「こんな感じで?」


ノリで貼り付け、丸く繋げる。


「その通りです」


全員が黙る。
幼稚園児の遊びではないか。


「マジですか、と」

「ええ。ちゃんとしたミッションです。しかも、社長直々の命令です」

「・・・この前の冗談を受け入れたのかしらね・・・・」


ナマエの言葉にツォンは溜息をついた。


「そのようですね。勝手に書類は溜まる一方です。早めに終わらせて下さい」

「ただの嫌がらせじゃないのよ!」

「嫌がらせでもなんでも、命令ですので。きちんとやって下さい」

「俺もですか、と」

「レノもです。あとからルードも来ます。ノルマは100メートル」


唖然とした。
100メートル?


「・・・・・社長に話をつけに行って来るわ」

「もうジュノンへ行きました」


もう無言で折り紙を切り刻み始めた。
レノも大きなため息をついてノリでつけ始めた。


「・・・・・・?」


いつの間にかさっきまで折り紙を切っていたが何かを折り始めた。


「何をしてんだ、と」

「紙ヒコーキ」

「・・・・それは見ててわかってるぞ、と」

「・・・・空が青いじゃない?青い空に白い紙ヒコーキが飛ぶの。とっても綺麗だよ」

「ふーん」

「見てて」


そう言うと、は窓を開けて紙ヒコーキを飛ばした。
紙ヒコーキはスッと綺麗に飛び上がった。


「おお」

「さて、と。さっさと終わらせちゃいましょーね」


そう言ってさりげなく折り紙を持つ。


「?どこいくんだ、と」

「セフィロスんとこ。ザックスとセフィロスにも手伝ってもらう」

「頼むぞ、と」







「・・・・・」

「マジかよ・・・・・・」

「こんな嘘つきたかないよ。本当の話」

「わかった。俺も手伝う」


ザックスは驚いてセフィロスを見る。
自分からそんな事を言ったのは初めてじゃないか?


「ありがとうね、セフィロス」

「ああ。では、俺は斬るからお前とザックスはノリで張っていけ」

「・・・・・今・・・切るの意味が違ったような気がするのですが・・?」


ザックスは冷や汗を垂らして言った。
そんなザックスを無視して刀の正宗を構える。


「だ、旦那?!」

「ザックス。忙しくなるわよ」

「つか、ナマエもツッコめよ!!」

「知ってた事だし。何より早く終わる!」


そう言ってセフィロスは何枚か折り紙を投げて空中で切り刻んでいく。


「うお!っぶねえ!」

「・・・・・・・・・」


ナマエはひたすら無言でノリを張っていく。


「ザックス。お前もちゃんと動け」

「旦那・・・・マジでむちゃくちゃ・・・・」


呆れて何も言わずにハラハラと落ちた折り紙をノリで貼り付ける。







あれから随分と時間がたち、ザックスは休憩室へ行った。
執務室にはナマエとセフィロスがコーヒーを飲んで休んでいる。


「やっと、終わった。折り紙も何枚か余ったし」

「・・・・ちょっと、かしてみろ」

「へ?」


セフィロスは折り紙を一枚取って、折り始める。
出来上がったものには笑みがこぼれた。


「何だ」

「いーや、私と同じものを作ったなと思って」

「・・・・・・」


セフィロスは自分で作った紙ヒコーキを窓から飛ばした。
外はもう夕焼けでオレンジの空に白い紙ヒコーキが飛び上がっている。


「本当に綺麗」

「そうだな」

「なんか・・・小さい時を思い出す」


苦笑して飛び上がっている紙ヒコーキを見つめる。


「昔は紙ヒコーキに想いを乗せて、飛んでいくんだって聞かされてたなぁ」

「そうか」

「今も・・・・・想いを乗せようかな」


一枚取り出して折る。


「ほう。その想いは俺に対してか?」

「さあ?どうでしょーね」


折ってから再び空に飛ばす。


「想いの相手は・・・・いつも私の隣に居る、綺麗な銀色の夫よ」


独り言のように呟いたが、セフィロスの耳にはしっかりと入った。


「その想いはしっかりと届いてるな」


セフィロスの答えにナマエは嬉しそうに笑った。




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