ねえ?愛ってなんだろう。
私は誰かと愛し合ったことがあるのかしら?
私の記憶は戦闘、殺戮、ザックスやレノとの飲み会。
こんなもの?
5.愛
目が覚めたらここに居た。
ここは確か・・・・。
「宝条の研究室」
「正解だ。全く、何が起きたんだ」
隣からイライラと点滴をかえる宝条の声が聞こえてきた。
宝条は点滴を変え終わるとナマエの首元に触れた。
「・・・飲まれたのか?」
「・・・・・・・・・・・」
頭がズキンズキンと痛んでいる。
薄っすらと記憶が戻ってくる。
この頭痛の痛みはあの女の能力か。
感情を壊す?何のことやら。
「飲まれたのかと聞いているんだ」
「・・・飲まれた」
珍しく宝条が声を荒げたのでは驚いた。
そんなにまずいことなのだろうか?
「何かそんなに重要?」
「・・・・いや、お前は心配するな。それよりセフィロスの執務室へ行ってやれ」
「何で?」
「何でって・・・・。おい、あの女に何かやられたか?」
グイッと肩を掴まれて目を見つめられる。
宝条に見つめられても何も思わないし、むしろ気持ち悪いなぁ。
「何?」
「・・・・瞳が赤い」
「え?!なぜに?!」
「感情を取る能力。・・・・・・・・・・・」
ナマエから離れ、考え込む宝条を横目にナマエも考えた。
感情?あいつは私から何の感情を取ったのかしら?
よくわからないけど、本人に直接聞くのが一番よね。
「じゃあ、医務室へ行ってくるわ」
「ああ。・・・・・・いや、待て」
「まだ何かあんの?」
「先ほど言っただろ。医務室へ行く前にセフィロスの執務室へ行け」
「はいはい」
何でとはもう聞かない。
セフィロスという言葉を聞けば頭がズキズキと痛む。
それはセフィロスに関しての感情か記憶を抜かれていることなのだろう。
それを調べるためには行くしかない。
『何を壊した、何をしたんだ』
『セフィロスさんがキスをしたら教えるわ』
『そんなものいくらでもしてやる』
『んんっ、んふぅ』
『教えろ』
『じゃあ、今度は抱いてくださる?』
『殺すぞ』
『その、ナマエに対する執着心。イライラするわ』
自分の執務室のソファで目を瞑って片手で目を覆った。
静かな部屋に耳だけは神経を集中する。
ガヤガヤとうるさい社内だが、ここに向かう一つの足音を感じた。
タークスである妻の癖、静かに歩く感じだ。
待ちきれなくて、セフィロスは立ち上がり自分からドアへ向かった。
「・・・・・・。その瞳の色はどうした」
「あの女の能力らしいのよね」
「・・・・・・・そうか」
急に自分が出てきてナマエは驚いていたがすぐに腕を引っ張り中へ入れる。
執務室の奥へ連れて行くと力強く抱きしめた。
「瞳の色がかわっただけか・・・?」
「え、ええ。たぶん。離してくれない?何で抱きしめるのよ」
「?」
「・・・私たちってこんな仲だっけ?」
「・・・・・・・、こっちを見ろ」
「へ?んんんっっ!!んーーーー!!」
バシンッ!!
「何すんのよ変態!私に触るな!あんたなんか大嫌いだ!」
走って背中を見せる妻を追いかけはしなかった。
叩かれた頬がなぜだか無性に痛くなったからだ。
『貴方たちって本当に愛し合ってる?』
『・・・・・・・・そうでなければ結婚しない』
『そう。女から愛情という感情がなくなっても?』
『そんな安いものじゃない』
『本当にそうかしら?甘く見てない?』
『・・・・・・・・・・・・・・・』
『私の能力を』
甘く見ていたのではない。
認めたくなかっただけだ。
例え記憶を失っても、感情を失っても。
絶対に自分のことを愛し続けているだろうと。