▼▲独占欲



すごい喧嘩をして1週間。2週間と時間は進んでいった。

どんどん進んでいくにつれて認めたくない感情も出てきた。

もうすぐでセフィロスとの家。自分の家に帰らないで1ヶ月になる。








3.独占欲







「おいナマエ・・・・・・・・。めっちゃ顔色悪いぞ、と」

今日まで何も言わなかったレノだったが今日はさすがに心配した。
暑いというのにちゃんと制服を着ているし、やけに細くなっている。

「ちゃんとご飯を食べているのか、と」
「・・・・ううん」
「・・・・・・倒れるぞ、と」
「私を誰だと思ってるのよ」

いつもの笑顔ではなく、力のない笑顔にレノは顔を顰めた。
そんなレノの顔を見ては居心地の悪い立場になった。
書類を手に持って立ち上がってレノを見ないで言った。

「この書類をツォンに届けてくるね」
「・・・・・・・はいよ、と」

歩き出そうと一歩踏み出した途端、頭が割れるように痛くなった。
次の瞬間にはすでに意識を手放していた。







この匂いは嫌いだ。
あの嫌いな研究室を思い出す。
あの宝条の居る研究室の匂いと至極似ている。

「目が覚めましたか?」

銀色の髪の毛。
サラサラしているのは似ているけれど短髪であるところは全く似ていない。
新しい医師の秀麗だというのは一般で言う美男子であろう。

「綺麗な髪だね。ついでに顔も綺麗だね。兄弟そろって美男美女ね」

皮肉のつもりで言ったはずが秀麗は嬉しそうにクスクスと笑い出した。

「それはありがとうございます。でも、貴女の髪、顔、性格全て好きですよ」

近づいてきてベットに手をつけた。
その反動でベットが少しだけギシッと音を立てた。

「もちろん」

ボーっとした顔で焦点があっていないナマエの目を覗き込んだ。
そして、ナマエの首元に指を這わした。

「貴女の血も、ね」

顔面に冷水をかけられたように覚醒する。
こいつと居ては危険だというのを忘れていた。
しかし、何も食べていない休んでもいない体は思った以上に重かった。
そのため動こうにも動けなく身体を奮わせるだけになった。

「巫女の血というのはもちろん知ってますので安心して下さい」

クスクスと笑いが止まらないようだ。
ナマエは今、この状況が悪夢に思えた。
動けないしベットで寝ている状態がさらに危険な感じがしてきてたまらないのだ。

「うわさを聞きました。・・・・今、あなた方は喧嘩をしているそうですね」
「ほっといて」

触れられたくない話をされたので思いっきり顔を顰めた。

「それは私にとっては好都合です」
「そう。・・・・血、ほしいの?」

秀麗を見てゆっくりと聞いた。
すると笑顔のまま頷いたのだ。
ナマエは目を軽く瞑って布団から首を出した。

「死なない程度よ」

スッと首を撫でる感触がして体を少し強張らせた。
次の瞬間。
首元に熱い感触がした。
すると、痛みではなく夜の行為のあの感じが身体の奥からじわじわと湧き出てきた。

「んっ・・・!!あっ・・・・!うあっ!」

怖くなってシーツを握り締めた。

嫌だ。
セフィロスじゃない男に抱かれているみたいだ。
こんなの嫌だ。

「んふぅッ・・・はあ、んく、あ・・・はぁ・・・・・」

これ以上は耐えられなくなり、秀麗の白衣を握り締めた。

「もっ・・・・やめ、あっん・・・やめて・・・・・・」
「本当に美しいですね・・・・・・」

最後に首元をペロリと舐めて、ナマエの前髪を振り払った。

「大丈夫ですか?」
「はぁ・・・はぁ・・・・・今のは・・・血を吸ったの・・・?」
「そうですよ」

首元に触れてみると微かに引っかき傷のような感触はした。
しかし、あの感じは一体何だったのだろう。
ナマエが息を整えている間に秀麗は薬を取り出してきた。

「この薬は飲んでおいて下さい。栄養が不足しています。今、血を飲んですぐにわかりました」
「栄養・・・・・不足・・・・?」
「そうです。栄養不足で倒れたんですよ」

確かに最近は全く食べ物を食べていないかもしれない。
食べたとしても会社にあったお菓子ぐらいだ。
ベットから身体を起こして頭を押さえた。
するとドアを思いっきり開ける音がしてベットを遮っていたカーテンが一気に開かれた。

「おや、銀の英雄さん。奥さんは栄養不良で倒れましたよ」
「・・・・・・大丈夫か・・?」
「大丈夫よ」

素っ気無く返してはセフィロスを睨んだ。
しかし、セフィロスはすぐにの顔が赤くなっていることに疑問を持った。

「おい、なぜお前はそんなに顔が赤いんだ」
「知らないわ」
「・・・・・首元にある痕は何だ・・・・・・」
「痒くて掻いたのよ」

セフィロスは黙って医者に掴みかかった。

「セフィロス!!」
「こいつの血を飲んだな」
「ちゃんと了承はとりましたよ?」
「お前はあのサキュバスと同じ飲み方じゃないだろうな」

秀麗の胸倉を掴んだまま殺気を飛ばして秀麗を殺す勢いで睨んでいる。
ナマエは止めようにも先ほどよりも身体が重く、全く動かない。

「もちろん、同じです。貴方も気持ちが昂ぶったでしょう?」

クスクスと笑ってセフィロスの胸倉を掴んでいる手を優しく触れる。

「私が血を飲むときは金の英雄さんの声に惚れかえってました」
「貴様!」
「セフィロス!!」

正宗を抜こうとしていたらしく、ナマエは本当に焦って動きにくい体を動かした。
怒りで震えているセフィロスの身体を抱きしめて、叫ぶように言った。

「殺したら駄目だよ!そんな任務はないでしょう!」

すると突然力が抜けて正宗を握っていた手がゆっくりと動いた。

「お前は無駄に優しいな」

声が優しくなったと思ったら今度はセフィロスのアップ。
キスをしてそのキスに呆然としているナマエをほっといてセフィロスは秀麗を睨んだ。

「こいつは俺のものだ」
「ちゃんと理解した上での行動でしたけど?」
「プレジデントとの契約は何だ」
「・・・・・金の英雄さんの血液は一切口にしない・・・でしたっけ」

惚けたように言う秀麗。
セフィロスはの腰を掴んで抱き寄せ、医務室を出た。

出た途端にセフィロスは思いっきりを抱きしめた。
ナマエは久しぶりの感覚に気持ちよさそうに目を瞑った。
そして、何故だかセフィロスを裏切ったような気持ちになり、涙が零れた。

「ご・・・ごめん・・・ね・・・・」

泣きながら繰り返した。

「ご、ごめ・・・・んね・・・・・ごめん・・・なさ・・・・」

そんなを愛しそうに抱きしめる。

「もういい。心配させるな」

離れてと目線を合わせるように少し屈んで涙を指で拭いた。

「帰って来い」
「・・・・うん」

頷いて再びセフィロスに抱きついた。
セフィロスは細くなったナマエの身体をジッと見つめた。

「細くなりすぎだ」
「え・・・・?あ、ああ。いい女になったでしょ?」

えへへ、と笑ってセフィロスと離れた。
ナマエのふざけた言葉にセフィロスは苦笑した。

「元からお前はいい女だ」

その日は2週間ぶりに帰った我が家を見て嬉しそうにセフィロスと顔を見合わせた。

結果としては確かに夫を裏切った行為をしたかもしれないが。
もう二度と、あんな事はしないと心に誓った。




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