「雪だぞー!起きろー!」「起きろー!」
「うぐっ」
キッドと私で寝ているローの上にジャンプして乗りかかった。
「死ぬだろ!」
「きゃー」「ぎゃー」
勢いよく起き上がったローに私たちはベッドから転がり落ちた。
キッドと一緒に笑って起き上がったローにも笑いかけた。
「雪なんだよ!」
「積もったのか?」
「うん!結構積もったよ!」
「すぐ着替える!」
小学4年生の冬。あまり雪の積もらない私たちの地域に大雪が襲い、外は一面雪景色。
雪国へ遊びに行かないと雪遊びなんて出来ないものだから私たちは大いにはしゃいだ。
手袋にスキー場に行かないと履く機会がないスノーブーツに、マフラーぐるぐる、モコモコダウン着て、いざ出発!
「…名前、可愛いな」
「えへへ、ありがとうロー」
「転ぶから手をつないで行こう」
「うん!ありがとう!」
ぎゅっと手袋ごしにローのほのかな温もりが伝わってくる。
足を行きにつけるたびにぎゅっぎゅっと、いつもはない足音が聞こえる。
真っ白な世界に三人の足跡が残って、私は後ろを振り返った。
いつもより静かな世界にいるみたいで、少し怖くなった。
「なー!かまくら作ろうぜ!」
ボーっとした思考を醒まさせたのはキッドの楽しそうな声だった。
帽子を被っていないキッドの頭は代わりにゴーグルでツンツンと立った髪の毛は真っ赤で、真っ白な雪によく映えた。
「雪だるま作るんじゃないの?」
「じゃあ、おれはかまくら担当するからお前とローで門番の雪だるまつくりな!」
「何で門番なんだ?」
「おれが城を作るからだ!ローと俺が騎士だぞ!」
「スケールでけーな」
ローとキッドが笑ってるのをみて私も笑い出した。
「じゃあ、立派な門番つくろう!」
「作ったらキッドのかまくらを手伝ってやろう」
「うん!」
雪は冷たくて、手袋をしてもどんどん指先が冷たくなってくるのがわかった。
横を見ると一生懸命、雪の玉を転がしているローが見えて私も目の前の雪の玉を転がし始めた。
少し大きくなるとローと見合って近寄っていった。
二人の距離がどんどん近くなって、こつんと雪の玉がぶつかり合った。
「ローとくっついたね!」
「うん…あ、雪玉上に乗せるから」
ローの頬が赤くなってる。寒かったんだなぁ。
確かに寒い。雪だるまが出来てキッドを見たら上着を脱いで手袋も取っていた。
寒くないのかな…あ、でも汗かいてるみたい。
「キッド!風邪引いちゃうよ!」
「あちーんだよ!」
「馬鹿、汗が冷えて一気に体が冷えるぞ。キッド、上着きろ」
「…なんかローが言うと説得力あるな」
「そうだよ!ローが言うことは間違いないよ!」
私たちの中で一番頭のいいローの助言は大抵当たってる。
キッドはいそいそと脱いだ上着を着込んだ。
手袋もつけて、またニカッと笑った。
「こ、これが城…」
「おう」
「…ただのカマクラに見えるけどな」
「ローは分かってねーなー。住めば城って言うだろ」
「都な」
三人の笑い声が公園に響いて、一緒にキッドの作ったカマクラの中に入った。
三人で入ると少し窮屈だったけど、ローが真ん中で私とキッドが両サイドに座った。
「こん中で飯くってみてーな」
「お菓子でも楽しそうだよね」
「でも、そろそろお昼だから帰らないと」
ローが腕時計を見ながら言うと私はかまくらの天井を見上げた。
…ちょっとくずれそう。
「わ、私出る!」
「は?!」
私が出た瞬間にかまくらは崩れた。
慌てて二人を掘り起こすために雪を両手でかきだした。
「ロー!キッド!!出てきてよぉー!」
「ぶは!」
二人して雪の中から顔を出して、私が手を差し出すと二人は顔を見合ってニッと笑った。
「きゃあ!」
腕を引っ張られて私も雪の中に顔から突っ込んだ。
冷たいけど、三人揃って顔まで雪まみれだ。
お互いの顔を指さして笑って、帰ってからはあったかいご飯を三人で仲良く食べた。
かまくらでは一緒に食べられなかったけど、場所が違っても三人一緒にご飯食べられたことに私は大満足だった。
_3/54