Boy & high school girl


▼ 私と少年とクレープ

「…おはよう」
「…ああ」

夢だと願いたかった事象は現実だったことを、目の前の少年の姿を見ることによって再確認された。
シャワーに案内をして、私のスエットを貸して両親のベッドで寝かせて、私は自室でぐっすり眠った。
眠って朝起きたら異世界とやらに帰っているんだと願いながら、一時の夢だったのだと思いながら目を閉じたんだけど、現実は何も変わっていなかった。


キッチンで目玉焼きを焼きながらソファにボーッとしながら座って外を眺めている少年を見た。
白髪のような銀色の髪が、肩からサラサラと流れ落ちて、縮毛強制したての髪の毛のようだと羨ましく思った。
少女のような綺麗な顔立ちで、細身でスラリと長い手足を見たら、誰もがモデル少女だと思うだろうに。
まさか、兵士で少年。
外を眺めている表情は少しだけ寂しげに見えた。

…そうだよね。
少年が誰よりも帰りたいよね。
可哀想に見えてきて、この世界に誰一人として少年を知る人は居なくて、なんだか孤独過ぎて、胸が苦しくなった。

「眠れたかな?」
「…もともと熟睡できないタイプだから」
「そうなんだ」

ソルジャーとかいう兵士なんだから、やっぱり戦地でぐっすりしないもんね。
ここに居る間は年相応に眠ってほしいけど。

目玉焼きとトースト、プチトマトをお皿に盛り付けて2人分のお皿をテーブルに置いた。

「さあ、食べよう。?どうしたの?」
「…いや」

少年の目が驚いたようにまん丸になって、首を傾げたけど、何も言わずに私の正面に座って「いただきます」と一緒に声を上げた。
誰かと朝食を一緒にするということが、久しぶり過ぎて私も気持ちが高揚しているのが分かった。

今日は少年の日用品と服を買いに行かないと。

トーストを齧りながら、同じく齧ってる目の前の少年を眺めた。
この髪色は目立ちすぎる。
髪色だけ隠せばどうにかなるか?

ということは、ヘアースプレーを購入して、今日は髪の毛を纏めて帽子をかぶってもらうか。

「買い物一緒に行くよね?」
「ああ。この世界を見てみたい」
「物騒なこと言ったりやったりするのは禁止ね!あ、あと魔法も禁止!」
「…分かった」

やっぱり昨日よりも寂しげな少年を見たら、こっちまで寂しくなってきた。
食事が終わって、少年に髪の毛のことを提案してみた。

「セフィロスの世界では当たり前な髪色かもしれないけど」
「俺の世界でも珍しい髪色だ」
「あれま、そうなの?それなら買い物するのに隠してもらいたいんだけど」
「分かった」

意外にも素直に納得してくれた。
ソファに座ってもらうと、櫛を片手にサラサラな髪の毛に触れさせてもらう。

うわ…本当にサラサラで肌触り良すぎる。
てか、首筋きれー、肌しろーい。

サラサラと落ちてくる髪の毛に悪戦苦闘しながら、結んでお団子に纏めると、私の帽子を貸してかぶってもらう。

「これならなんとか大丈夫そう」
「そうか」
「ありがとうは?」
「…ありがとう」

かわっ!!!なに今の照れながらのありがとは!可愛すぎて悶え死にそう!!
少年の準備も出来て、私の準備もして、ショッピングモールへ向かうことにした。
服は私のGパンとシャツを貸したけど、ウエストが少しゆるい。嫌な感じだ!




ショッピングモールへ到着すると、まあ、視線を感じる。
まず、ショッピングモールに着く前に芸能スカウトに合うわ、もちろん撃退した。
写真撮ってほしいと言われるわ、もちろん断った。
少年は全てに無反応で私に任せているようだった。何だかもともと感情に乏しいとは思ってたけど、こんな声かけられたりして嬉しいとは思わないのだろうか。
私だったらテンション上がるけど。

「嬉しくないの?」
「なぜ嬉しくなる?」
「え、いや、だって外見めっちゃ褒められてるんだよ?」
「別に外見を気にしたことないし、良くしようとも思っていない。だから何とも思わない」

淡々と述べる少年に、なんというか、兵士ゆえなのか、年齢的には中学生の少年のはずなのに。
大人びているというか、落ち着きすぎているというか、とにかく私は複雑だ。

「名前、あれは何だ」
「あー、クレープ屋さんだね」
「?なぜ並んでる?」
「並んででも食べたいんだよ」
「?クレープごときでか?」
「え、美味しいものは並んででも食べたいでしょ?てか、クレープ屋さんとかあるの?」
「…ある。街を歩いたことはないから実物を見たことはない」

少年の発言に今度は私が目を丸くする。
街に行ったことがない??14歳になるのに?一度も行ったことない??どんな環境で育ったんだ。

「…普段どうやって過ごしてたの?」
「任務が無ければ研究室で過ごしてる。戦闘をモニタリングされたり、投薬したり」
「…」

予想外の重い話に私は言葉を失った。
まるでアニメか映画の世界だ。
だからあんな日常的な朝食や、髪を縛ってあげる時もすごく緊張していたのか。

「じゃあさ、せっかくこの世界に来たんだから私がいっぱい楽しいこと教えてあげる!」
「別にいい」
「よし!最初はあのクレープだ!!」
「は?おいっ!」

少年の返答は無視して、少年の手を取ると走って列に並んだ。
ため息をついた少年は嫌がった顔をしていても私の隣から逃げることはしなかった。

「どれにしよっかねー」
「甘いものは嫌いだ」
「少年、糖分も少しは必要だよ」
「誰が少年だ。殺すぞ」
「ひぃ!」



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