Boy & high school girl


▼ 私と少年と話し合い



物騒少年はソファに座りながら読み終わった日本史の教科書をテーブルへ投げ捨てた。

「やはり、異世界だ」
「は、はぁ」
「…」
「あの、しょ…セフィロスはどうやってここに?」

危ない危ない。少年と言いそうになったところすごい勢いで睨まれたので慌てて言い直した。
いやいや、私年上よ?何なのこの威圧感。

少年は私から視線を外して外を眺めながら口を開いた。

「森の中で敵に囲まれて、逃れるために泉の中に身を潜めようとした」
「…」
「モンスターも人間も居たから性質の悪い任務だった」
「…」
「その泉の深くにマテリアらしき光が見えてそのマテリアを掴んだ瞬間…意識を失った」
「それはそれは…」
「目が覚めたらここだ」
「…」

色々と疑問点はあるが…駄目だ。
一つ一つ聞いていくしかない。

「ちょっといくつか聞いてもいい?」
「ああ」
「まず貴方は何してたの?森で」
「任務だ。俺はソルジャーという…こっちでいう自衛隊のようなものだな」

14歳は義務教育中のはずだ。
いや、海外だと義務教育がない国もあるのだからそれは置いておこう。

「も、モンスター?」
「こっちには居ないようだな。平和な国で良かったな」
「ありがとうございます?…そのモンスターって」
「そうだな……知能のない殺人鬼と思えばいい」

ちょっと待てよ。
この子、この歳でその殺人鬼…モンスターやら人間やらを相手に何をする気だったんだ。

「えっと、任務っていうのは…」
「モンスターと反神羅軍の討伐だ」
「つまり…」
「殺すことだ」

淡々と言い放つ少年に唾を呑みこんだ。
いや、ね、海外には小さな子供でも銃を持つ戦争の国があるのだから…分かってはいるけど…。
目の前の綺麗な少年からは想像もつかないけど…無駄に馬鹿力だったり口が悪いのはそういう影響…?
いやいや…ま、まあそういう妄想の世界なのかな?

「マテリアって?」
「魔法が使えるようになる。もとは…いや、お前に説明したところで理解できないだろうな」
「魔法?」

首を傾げていると、少年はごそごそとポケットを漁り始めた。

「一個だけポケットに入っていた…ケアルのマテリアだな」
「ビー玉?より大きいか?スーパーボール?」
「…ちょっと指かせ」

よく分からないけど手を少年に差し出すと、少年は自分の人差し指の先をあろうことが噛み千切った。

「ぎゃああ!ど、どうしたの?!」
「“ケアル”」
「え、あれ?…ええええーーーー!!」

衝撃的な光景に叫ばずにはいられない。
いきなり目の前に蒼白い光が現れたと思えばその光が指先を包み込んで、傷が消えた。
どういうマジックだ?!

私の叫び声に顔を顰めながら「うるさい」と言っているが、こんなの騒がない方がおかしい。
だって目の前にあった傷は跡形もなく消えているんだよ。

「私にも使えるの?!」
「…どうだろうな」
「かしてよ!」

少年からガラス玉を受け取り見つめる。
不思議な輝きを示していて、少しだけ重みがある。落としたら割れそうだ。

「えっと何て唱えればいいの?」
「ケアル」
「“ケアル”?」
「…」
「…」

同じように唱えてもガラス玉はガラス玉だ。

「全く魔力のない奴、初めて見た」
「魔力?」
「ケアルすらも発動できないとは…」

何だかよく分からないけどものすごく馬鹿にされているのは分かる。
知能のレベルが低いというのか?それとも某魔法映画のように魔法使いの血が流れていないからなのか。

「ここの奴は魔法を全く使わないのか」
「へ?魔法使いなの?セフィロスって」
「いや」
「え、魔法使いじゃないのに魔法使えるの?空飛べたり、何かを浮かせたり、杖持ってたりしないの?」
「普段は刀を使うが」
「刀っ!魔法とミスマッチ!」

侍が魔法を使うとかミスマッチ!明らかに外国人のこの少年が刀持つのもミスマッチ!

「…お前、馬鹿だろ」
「何をいきなり」
「先程から言葉に知能を感じられない」
「すごい悪口!君って友達居ないでしょ!」
「…」

あ、やべ、なんか図星っぽい。

「あ、えっと…私とセフィロスはもう友達だね」
「…お前と俺が?」
「うん。まあ、もう信じるしかないし、謎の現象も見たら信じざる負えないし。帰れるまでうちに居ていいよ」

せめてもの救いが言葉が通じることだ。
これで異世界語なんて離されたらコミュニケーション取れずにどうにもならなかった。

部屋の案内をして、父のベッドをしばらく使わせてもらうことにした。
両親の寝室を寝床として使ってもらい、一人で外出しないでほしいことを伝えた。

この髪色は目立つし、ここへの出入りが見られたら近所から何言われるかわからん。
明日、買い物して帽子や服を買いに行くとして、今日は少年の世界について教えてもらうことにした。

少年は自分からは話すタイプではなさそうだが、私の問いかけには素直に答えてくれるようだ。
一緒に暮らしていくからにはちゃんと仲良くしていかないとね。

これからの生活に物騒なソルジャー少年と、女子高生のデコボココンビで仲良くやっていこう。



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