クルーからプレゼント
side: Law
「お誕生日おめでとうございます!!」
そう仲間たちに言われ、それぞれからプレゼントを受け取る。
毎年、せめて全員からでいいと言っているのにそれぞれが用意するためすごい量を腕に抱えることに。
今回も例年通り、多くのものを渡されて苦笑した。
豪勢な夕食に高価な酒。
朝まで続く宴はいつもよりも賑やかだ。
「キャプテンキャプテン。おれらからは特別なものを用意したんすけど」
「特別なもの?」
「キャプテンの部屋に置いてあるよ」
ベポとシャチが嬉しそうに言ってきて、ペンギンがおれへ一つの小さな鍵を渡してきた。
「生ものなのですぐ船長室へどうぞ。船長室にも料理とお酒、お待ちしてるんで」
「は?」
「あ、船長室でご飯食べたらちゃんと帰ってきてくださいね。主役なんですから」
意味が分からねェ。
宴も始まったばかりだというのに追い出されるってのか?
おれが問いかけても「まあまあいいから」とか言われて、3人にぐいぐいと引っ張られて部屋の方へ連れて行かれる。
「お、おい」
「あ、攻撃してくる可能性もあるんで気をつけてくださいね」
「は?もしかして動物か?」
「まあー動物っちゃ動物っすね。あ、でもキャプテンは間違いなく喜ぶものです」
曖昧な返答を返され、結局おれは船長室へ入った。
3人はおれを船長室へ見送った後、すぐに立ち去り残されたのはおれだけ。
ベッドの前に木箱が置いてあり、確かにガタガタと中から物音が聞こえて来る。
テーブルには2人分の食事があって、そこでハッとなった。
食事が二人分。木箱の中身は間違いなく人間。
すぐに木箱の鍵を開けて中を見れば、口を塞がれて手足の縛られたナマエがおれを睨みつける。
ああ…まさか自分の誕生日に会えるとは思わなかったから、さすがのおれでもこれは嬉しいプレゼントだと思ってしまう。
「へェ…確かに最高のプレゼントだな」
「んんー!!」
「ほら、解いてやる」
口輪を外してやるとすぐに叫び出した。
「何がトラファルガーへのプレゼントだ!さっさと元の場所へ戻せ!!」
「せっかく来たんだ。夕食ぐらい食ってけよ」
手足の拘束も解くと、ナマエは諦めたように深いため息をついた後に木箱の中から出た。
「…トラファルガー誕生日らしいな」
「そうだな」
「…プレゼントも何も準備はしてない」
「一緒に過ごせりゃ立派なプレゼントだ」
そう口角を上げて言ってやれば、ナマエは素直に席に座る。
おれも向かいの席に座り、グラスに酒を注いだ。
「キレたいところだが…貴様の誕生日に免じて許してやる」
「そりゃどーも」
「…誕生日おめでとう、ロー」
その言葉だけで充分プレゼントだ。
会えるとも思っていなかったし、こうしておれの船で、しかも一緒に食事を取れるなんてこれ以上の幸せはない。
だが、ここまで幸せ気分を味わうと、人間は欲が出てくる。
もちろん。食事が終わった後にプレゼントで遊ばせてもらう。
口角を上げてそんなことを考えながら、料理を美味しそうに頬張っているナマエを見つめていると怪訝そうな顔してこちらを見てきた。
「…何だ」
「いや。ナマエ、おれへのプレゼントが言葉だけで済むと思うなよ」
「なっ?!なにぃ?!」
「朝までに船を降りられるといいな?海兵」
「ふざけるなー!!」
食事が終わった後は3人からのプレゼントをたっぷりと味わい尽くした後、ぐったりしたナマエを抱きかかえて宴に戻った。
「あれ?連れてきたんすか?」
「目覚めた後におれの部屋で暴れられても困る。…何かコイツの他にも海兵が混ざってねェか?」
酔っぱらったシャチと腕を組みながら仲間とゲラゲラと楽しそうに笑っているのは、正義のコートをかけたナマエの同僚だ。
というかお前ら海兵相手に打ち解けすぎだろ。おれが言うのも何だが。
「ナマエを連れてくる時に仲間に報告されたら困ると思って一緒に連れてきたんですけど、思いのほか酒に弱くて」
「くく、何だよそれ。ずいぶんと今年は面白ェ誕生日だな。海兵のプレゼントに、海兵が宴に参加」
「ダメでした?」
「いや、忘れられねェ誕生日になった」
ペンギンが嬉しそうに笑って、宴の中心へ入っていった。
おれは眠っているナマエを抱きかかえ、その宴を見て愉しんだ。
Happy birthday!! Law!
《おまけ:攫われた時のお話》
とある島で相棒と巡回中にその事件は起きた。
「見つけたー!!!シャチ!ペンギン居たよ!」
「貴様らは…」
ルーイと同時に銃を構えるが、どうやらつなぎ姿のクルーだけらしい。
しかも男2人だけだ。よく見る顔だから古株のクルーなのだろう。
何度か見かけたこともある…ということは、トラファルガーとこちらの船に乗り込んでくるメンバーなのだろう。確か、シャチとペンギンだ。
周囲を見渡しても、あの悪そうな笑みを浮かべていつでも余裕ぶっこいているトラファルガーの姿はない。
まあ、もしトラファルガーがいればすでに私は能力でその腕の中に閉じ込められていただろう。
「ハートの海賊団!船長は不在か?まあ、貴様らだけでも連行す…うわっ!何をする?!」
「ごめんねー」
「ナマエを放せ!白熊のくせに!」
「お前はこっち」
ルーイが私に気を取られた瞬間に素早く背後を取ったシャチとペンギン。
そして私は白クマのベポに羽交い絞めにされた。
二人して油断していたとはいえ、こうもあっけなく捕まると結構ショックだ。
自分たちは強くなったと思っていたが、以前言われたトラファルガーの言葉通り。
私たちが追い付けないくらい、ハートの海賊団も強くなっている。嫌味なぐらい。
「何が目的だ!!」
「おれ達のキャプテンが今日、誕生日なんだ」
「…トラファルガーが誕生日…?」
「知らなかったの?ナマエ。ダメだよ、恋人なんだから」
「白クマが注意してくるな!」
「白クマが注意してすいません…」
なんだこの白クマ!どんだけ打たれ弱いんだ!
こんな打たれ弱くてよく海賊が務まる。
私もルーイも縛られて、私は白クマに抱えられたまま先ほどのことを考えていた。
今日はトラファルガーの誕生日だったのか。
確かにこの島に居るのなら祝ってやることも必要かもしれない。
ちょっとトラファルガーの嬉しそうな顔だって見たい。
「…ちなみに私たちを攫ってどうする気なんだ」
「ナマエはおれ達からキャプテンへのプレゼントで、男の方は他の海兵に報告されないように…人質?」
「なに?!可愛い姿して考える事がえげつないクマだな!」
「すいません…」
こうして、私は木箱に入れられてトラファルガーの部屋へと運び出されることとなったのだった。