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STEP2

 
 
「“お互いに相手を3回ときめかせよ”…。ときめきですって、キャプテン」
「…」

心底不愉快そうな顔でモニターを見上げているが、指示内容に不快感を抱いてるだけではない。キャプテンは指示されるのが大嫌いだ。つまり、今の状況全体が不愉快なのだろう。

だが、何もしなきゃ進むことも出来ないだろうし。
1つ目の指示クリアであの5つあるうちの電球が1つついたのだから、恐らく5回指示があると考えられる。
だったら、せめて5回は試してみなければ。

「従うのか?」
「はい。じゃないと進めません」
「殺し合えって出ても従うのか?」
「殺し…。さすがにそれは従いませんが…。今のところ出てくる指示は、従えないようなものでもないので」
「…確かにな…」

まるで恋人同士を試すような指示ばかりだし、安全なものばかり。そう思えば別に苦でもないし、私にとってはキャプテンの気持ちを堂々と知れて嬉しいだけ。

とりあえず、ときめかせる為にモニターを見上げているキャプテンの両頬を両手で包み込んで、私の方を向かせるとニッコリ笑った。

「…」
「お!カウントが減ったということは…私の笑顔にときめいちゃいましたね?!へへへー!キャプテンが何も言わなくてもときめいたことが分かっていいですね!これ!」

赤い数字のカウントが‘2’に変わり、私はガッツポーズをして喜んだ。
ほとんど表情に出ないキャプテンの心境は掴めない。あ、怒ってる時のみ表情が分かるか。
どちらにしろ、私にときめく瞬間などないのではないかと思っていたのだが、意外と単純なことにときめいてくれていたようだ。

「だいたい、ときめきってなんだよ」
「うーん…こう…ドキッとする瞬間って感じですかね」
「…」

口を噤んだキャプテンに、私は調子に乗ってニヤニヤしながら先ほどの状況を再確認することにした。

「さっきのは私の笑顔にドキッとしたんですかね?それとも顔を向けられてキスされそうだったからですかね?」
「うるせェ」
「ふがっ」

顔面を鷲掴みにされるとそのままアイアンクローをされる。
頭を潰される前にキャプテンの手をタップした。

「ギブです!し、死ぬ!」
「…カウント減らねェな。脈拍を速めるのとは違ェのか」
「違うに決まってます!」

確かにたった今、私は生命の危機に瀕したために脈拍は速まっただろう。
だが、こんなことをトキメキと呼ばせてなるものか。
ただの恐怖でしかない。トキメキとは程遠い。どちらかというとメキメキだ。
いや、そんなふざけている場合ではない。しっかりしろ、私。

手を離されて一安心したところで、私は次のトキメキのためにキャプテンに抱きついた。

「好きです…ロー…」
「…」
「お!トキメキましたね!意外とキャプテン単純なことでときめいちゃうんですね」

相変わらずポーカーフェイスだが、数字は嘘をつかない。
着実に私のカウントは減っていき、残りは1回ときめかせるだけだ。

どうするか考えていると、キャプテンが私の顎を掬い取って額と額をコツンと当てた。

「名前、お前が好きだ」
「…うう…それトキメクに決まってますぅ…」

フッと鼻で笑ったキャプテンが唇を私の耳元に持っていき、逃げられない様に私の後頭部に片手を回す。
そのまま低い声で囁くように言った。

「お前はおれのものだ」

顔が一気に熱くなった。
キャプテンの声が直接体に響いたように感じて、私の心臓もバクバクだ。
モニターを見ればあっという間に私と同じカウントになっている。
どうやら単純なのはお互い様のようだ。

2人してモニターを見て笑い合うと、見つめ合って自然と唇が合わさると『ぽーん』と軽快な音が部屋に鳴り響き、もう一度唇を合わせた。

「どっちが単純なんだか」
「うーん、お互い様ってことですね」
「くくく、確かにな」

お互いにキスで最後のときめきポイントをクリアし、新たな指示を見るためにモニターを見上げた。

「“お互いの好きなところ3カ所にキス”」





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