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STEP0

ガチャっと医務室のドアを開けて私は体を固めた。
真っ白な壁紙に床まで真っ白。
部屋の中心に大きなソファが置いてあって、そのソファに近寄れば勝手にドアが閉まった。
しかもガチャリと鍵のかかった音が聞こえた気がする。

「え、何で」

慌ててドアノブを回してみようとしたがびくともしない。

意味がわからない。夢なのだろうか。
だいたいこの船にこんな部屋はなかったし、私は確実に医務室のドアを開けたのだからこの部屋に入ること自体が不可思議な出来事だ。

試しに頬を摘んだがかなり痛いし、壁を叩くと拳が痛む。

「誰かああああ!!わあー!!!」

大声を出してみても、辺りはしーんとしている。
ここまでしてもどうにもならないのだから仕方ない。
ソファに腰を下ろすと凄いフカフカで座り心地は最高そうだ。

やる事もないし、どうにもならないのならばと、潔く諦めて靴を脱いで完全にソファの上に横になった。
天井を見ても真っ白だ。

ボーッと過ごしていると、どのくらい時間が経ったのかは分からないが、ガチャっとドアの開く音に反応して勢いよく起き上がった。

「キャプテンっ!ああ!閉めないで!」
「??」

キャプテンが中へ入ってくるとドアは自然と閉まり、ガチャっと鍵の掛かる音と…ドアノブが消えた。

「は?どういうことだ…」
「キャプテンまで…私もよく分からずここに閉じ込められてて…」
「閉じ込められててって言う割には随分とリラックスしてんじゃねェか」

キャプテンに呆れられて慌ててベッドから降りた。

「わ、私も色々試したんです」
「…“ROOM”……能力も使えねェ」

私も能力を発動させようにも全く反応はない。
ガンっと凄い音を立ててキャプテンがドアを蹴りだしたが、傷一つついていない。

『ポーン』

軽快な音が聞こえてきて、私とキャプテンは顔を見合わせた。
二人してキョロキョロと音の鳴った物を探し、私はキャプテンの背後にあったドアの上にあるものに気が付いた。

いつの間にか電球が5個とそのすぐ上に、何やらモニターらしきものが出てきている。

「キャプテン、ドアの上」
「…いつの間に…」

二人してそのモニターを眺めると文字が現れ、それを私は読み上げた。

「“指示通り行動しないと出られない部屋”?…意味がわからない…」
「…」

私もベッドから降りてキャプテンの横に立ち、一緒にモニターを見上げる。
先程の文字以外に何も書いていないし、電球が5個並んでいるのも謎だ。

「こんな能力は聞いたことねェな…」
「それに私たちの能力を無効化させるなんてありえません」
「海楼石の部屋でも無さそうだしな」

キャプテンが壁に手を当てて、首を傾げる。
私もその手を追いかけるように壁に手を添えた。

力が抜けることもなく、本当にただの石造りの壁って感じだ。

「キャプテンはどこのドア開けて入ってきました?」
「医務室。お前が入ってったのが見えたから」
「そうですよね、私だって医務室に入りました。まさかキャプテンと私の知らない間に改装しました?」
「有り得ない。それに閉じ込められる理由もねェし、能力が使えなくなる理由も見つからない」

2人して考え込んだが、答えは見つからず唸るばかり。
そんな中、『ぽーん』と軽快な音が部屋に響き、私とキャプテンは再びモニターを見上げた。

「“一つ目の指示、相手の好きなところを3つ答えよ”」
「…」
「…」

なんてこったい。





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