金色の女神
さようなら、寮暮らし  [ 74/83 ]


引っ越しのために休暇を2日間もらえた。
明日と明後日が休みだが、今夜のうちに荷物をまとめておこう。
そう思いながら、大量にもらってきた段ボールを組み立てていく。

ヴェルドにはすでに統括が話しをつけていた。
タークスの寮についても問いかけたが、新人がたくさん入ったためもう空はないと無情にも見放された。
そのかわり、二日間はタークスでも任務をいれないよう配慮してくれるらしい。

ザックスも今日から2日間の休暇をもらったらしく一緒に明日の朝に一緒にトラックに積むことにした。
アンジールとセフィロスは明日だけ休暇をもらえたらしく、明日の荷物運びだけ手伝ってくれる予定だ。
2ndの寮で荷物運びをすると他のソルジャーの目があるため、ザックスと二人で運び込んで1stの寮から二人に手伝ってもらえる。

寮の家具は全て備え付けのため、持っていくのは服や雑貨ばかりだ。
段ボールに詰めながら、部屋を見渡した。
思えば、一年半ほど住んでいたが、なかなか住み心地は良かった。

ここの狭いベッドでよく二人で眠ったなぁ。
数日前はアンジールとジェネシスまで泊まりにきて…
庶務課の女友達も泊まりに来て…
隣の同僚はどこに住むのかな…
なんだか…いざ出ていくとなると寂しいものがある。

服を閉まっていくと、ふと男物の服や下着が出てきて笑った。
セフィロスが頻回に泊まりに来るから、勝手に置いてったんだよね。
抱きしめてみるとほのかにセフィロスの匂いがする。

…やばい変態だ。私。

普段からセフィロスのことを変態と罵るけど、人類みな変態。
そんな言葉が頭を過る。

荷物を詰め終わると、シャワーを浴びて疲れた体を最後の寝床になるだろうベッドに体を沈めた。





翌日、会社で借りたトラックへ段ボールを詰め込み。(ザックスの多い段ボールの量には驚いた)
ザックスが運転をしながら二人で1stのマンションへ走らせた。

「菓子折りとか持ってくべき?」
「あー、これからお世話んなります的な?いるかあ?」
「社会人として必要じゃない?いらないもん?」
「んー…あ、ここのケーキ屋でケーキ買ってこ!」

途中のケーキ屋に寄ったが、セフィロスは甘いもの嫌いだし、どうしようか悩む。
仕方なく、以前食べさせられなかったお酒のチョコレートが売っていたのでそれを買うことにした。

「よしよし、じゃあ、行くぞー!」
「おー!」

二人で今から行くことをそれぞれの家主へメールを送り、出発した。
高級マンションが立ち並ぶ一等地に1stのマンションは存在感を放っていた。
そもそも、1stだけでなく、重役の家族なども住んでいると聞いたことがある。
ザックスと名前は何度か行ったことがあるが、改めて見上げた。

「ひゃー…なんか今まで住んでた寮と違い過ぎて…」
「ほんとだよね。貧乏人がいきなり宝くじ当てちゃった的な」

「バカ言ってないでさっさと運ぶぞ」
「アホ面並べて…」
「アンジール、セフィロス。おはよう」

二人がラフな格好でエントランスから出てきた。
セフィロスは軽々と段ボールを積み上げて持っていき、アンジールはザックスの段ボールの量に呆れかえってた。(その気持ちもわかる)

名前は一つの段ボールを持ち、残りの三つをセフィロスが持ったため往復することなく荷物運びが終了した。
よく泊まりに来ているため、空き部屋の場所は分かっている。
段ボールをその部屋に持っていく途中で声がかかる。

「服は寝室に」
「え?何で?セフィロスの寝室でしょ?」
「お前…寝室別にするつもりか?」
「当たり前でしょ?私は居候なんだから」

黙ったセフィロスを無視して、段ボール一つを空き部屋に持って行った。
この空き部屋には客用のシングルベッドが置いてあるのは確認済みだ。
すると勝手に寝室へ持って行ったセフィロスが戻ってきて、私から段ボールを奪い取った。

「あ!ちょっと!」
「お前を客だとは思ってない。ここは客間だ」
「ソファで寝ろと?」
「ソファで寝るなら毎日ソファでお前が気絶するまで抱くが?」

なんつーこと言うんだこの暴君英雄は。
颯爽と荷物を運び、その後ろについていった。
諦めて寝室に置かれた段ボールから服や下着を取り出して、仕舞っていく。
ウォークインの中にも制服をかけていきながら、食器などはセフィロスにお願いした。

そんなに荷物もなかったため荷ほどきもすぐに終わってしまい、リビングのソファでテレビを見ているセフィロスのもとへ行った。

「これからお世話になります。つまらないものですが…」
「…」

一応、菓子折りですと言って、セフィロスにチョコレートを差し出した。
受け取ってさっそく開けだす。

「お酒のチョコレートだから甘いもの苦手な人でも食べられるかもって」
「お前も食べるか?」
「ちょっと欲しい」

近寄っていき、箱を渡されるのかと思ったら一つ口にいれたセフィロスに手を引っ張られてキスをされる。
口の中にほろ苦いチョコレートの味とほのかなアルコールの味が広がった。
倒れ込むまいと両手を突っぱねていたため、諦めたのかしばらく口内を犯されていたがそれ以上進まず解放された。

「はっ…はぁ…、これ結構アルコール強いね」
「そうか?」
「セフィロスはお酒強すぎるんだよ…」

そういえば1st三人組と飲んでる時には三人のペースに全くついていけなかった。
てか、三人とも酔ったところを見たことがない。

「ねえ、セフィロスとかアンジールとジェネシスは酔ったことあるの?」
「あるに決まってるだろ。三人とも吐くまで飲んだこともある」
「ええ?!うそ!吐くまで?!」
「記憶を飛ばしたこともあったな…」

信じられない。
けど、冗談を言っているようにも見えないし…見てみたい。

「いつか酔うまで飲ませてやりたい」
「お前には無理だな。弱すぎる」
「…あ!そういえば、ザックスの手伝ってやらないと」

セフィロスの腕を引っ張って、起こそうとする。

「セフィロスも行くよ」
「…なんで俺まで子犬の世話をする必要がある」
「今日からお隣さんなんだから、挨拶がてら」

嫌がるセフィロスを引っ張り出して、アンジールの家のドアが開いたままで荷物をせっせと運んでいるザックスに声をかけた。

「何か手伝おうか?」
「お!あんがと!じゃあ、運ぶのはこれで最後だから荷ほどき一緒に頼むよ。ケーキもみんなの分買ったし」
「やった!」

相変わらずめんどくさそうな顔をしているセフィロスを押し込んで、「お邪魔します」と上がらせてもらった。
リビングでは盛大な溜息をついて、ザックスの荷物である段ボールを見ているアンジールが居た。

「少しは荷物整理してから引っ越しをすればいいものを…」
「全部必要なの!」

アンジールとザックスのやり取りを見て思わず笑った。
まるで兄弟のようだ。

セフィロスは手伝う気がないのかソファに座り、アンジールはキッチンで昼食を作ると入っていった。
仕方ないため、2nd二人組で部屋に入り荷ほどきを始めた。
段ボールの中からはたくさんの服とゲーム、雑誌がでてきた。

「うわー、何この機械」
「ん?ゲームだよ、やってみる?」
「うん!」

操作方法を教わり、ベッドを背もたれにしてゲームを始めた。
今までこんなゲームとかに無縁だったため、興味も出なかったがなかなか楽しい。
モンスターを狩って、強い装備を作ったり、任務を請け負ったり。

仕事もこんなゲーム感覚で出来たら楽しく思えるのかな。

とか思ってしまうが、現実は命の危険と隣り合わせ。
そんなことを思いながら進めていたが、巨大なドラゴン相手に苦戦を強いられた。

「何こいつ!めっちゃ強いんだけど!ねえ、ザックス!やられちゃう!」
「えー?ちょっとかしてみ」

ゲーム機を渡してその隣から覗き込んで、ザックスのプレイを見つめた。

「ほう…片付けずにゲームか…」

低い声が聞こえてきて二人して体をびくっと強張らせた。

「あ、だ、旦那…」
「ちょっと休憩してただけ、い、いま片付ける」

ゲームをベッドの上に置いた二人は再び荷ほどきに入った。
その様子に溜息を一つついて、セフィロスは再びリビングへ戻っていった。

黙々と作業をしていく中、雑誌を本棚に詰め込みながら名前は思わず顔を顰めた。

こ、これは…

表紙には厭らしい恰好をした女性の姿や下着姿の女性の姿。
しかも、厭らしいタイトルのDVDまで出てきた。

静かに段ボールの蓋を閉めて、顔を赤くしながら服を閉まってるザックスを見た。

いや、男の子だし、年頃だし、レノだって見てるからね。
でも、ザックスってそういうの見ないと思ってたし、なんかそういうの見るって…いや、うん、男なんだし。
そういえばセフィロスの部屋ではそういうの見つけたことなかったけど…隠してるのかな。
今度隅から隅まで捜索してみようかな…思わぬ性癖が見つかるかもしれないし…。

待って待って、とりあえずこれどうしよう。
ザックス本人に言うべき?
でも、女からこういうの指摘されるのって…どうなの?

いや、相手はザックスだし…

この状態をどうするべきか、悩みに悩んだ。


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