金色の女神
戦闘の後の体を休めて  [ 55/83 ]


セフィロスにゆっくりと体を下ろされると、名前はすぐに乱れた自分の服を直していく。

「本当に最後までするなんて…」
「良かっただろ?」
「とんでもない不良指揮官ね…」

未だに服を直そうとしないセフィロスに溜息をついて、名前が服を直していく。
セフィロスのベルトを締めるために腰に両手を回して紐に通す。

「くくく、世話をされるのもなかなかいいな」
「世話のかかる指揮官ですこと」

ベルトを締めて、顔を見上げるとセフィロスが頬に手を添えて目元に触れる。

「少し腫れてるな」
「…あまりに正論言われて…私って子どもだよね。たまにセフィロスと同じ歳と思えないもん」
「俺は同年代よりも落ち着いている方かもな」
「それは老けて…いてっ!」

なんか出会った時も同じようなやり取りをした気がする。
ふふふっと笑うとセフィロスも笑った。

「スラムの小汚い女が今や自分の女とはな」
「私だってあんな女ったらしな最低クソ男が今や自分の恋人なんて…むむ、何よ」
「口の悪さは変わらずだな」

セフィロスに片手で両頬を掴まれ、ひよこ口にされる。
手を振り払って、セフィロスを鼻でふんと笑ってやる。

「英雄の頬に傷をつけたのは私だけかもねー。傷残らなくてよかったねー」
「俺の背中に傷をつけるのもお前だけだな」

未だに上半身裸のセフィロスは背中を見せて鼻で笑った。
先ほどの情事の時に名前がつけた傷が見える。
顔に熱が集まり、落ちているセフィロスのコートを投げつけた。

「さっさと服きてよ!」
「くくく、このまま中央テントに行くか」
「っ!絶対だめ!!」

この遠征で来ている女は自分一人。
明らかに情事でつけたような小さな爪痕はさすがに言い逃れができない。

「は、早く着て」

着る気のないセフィロスに落ちた上着を取り、無理やり着せていると腰を掴まれ抱き寄せられる。

「ちょ、ちょっと」
「名前ー!仲直りしたかー?」
「あ!ザックス!」

バサッとテントの中に勢いよく入ってきたザックスは椅子の上でセフィロスの上に跨っている名前を見て固まった。

「わ、ち、違うの!離してセフィロス!」
「な、仲直りできて良かった…」
「離してってば!」
「ザックス、何の用だ」

解放する気のない手は私の背中に左手を回し、胸板に押し付けられる。

「それが、アンジールと2nd達数名と周り調査してたら洞窟あって、そこに温泉あったんだよー!」
「温泉?!ほんとに?!」
「明日出発すんだったら交代で見張りしながら今日入ろうってなって!今、アンジールが見張って2ndと3rd入ってる!」

ひゃっほー!温泉なんて初めて入る!
名前はキラキラと目を輝かせてセフィロスから少し体を離す。

「セフィロスさん!温泉ですって!」
「…それでお前はまさか2nd達と入るとか言わないよな」
「さ、さすがに言いません!」
「次は名前が見張ってる間に俺とアンジールとセフィロスで入んの!」
「よし!行こう行こう!」

セフィロスから降りて、自分の荷物から服と下着を取り出す。
ザックスがニヤニヤしながら近寄ってくる。

「そのタオル、首にかけてた方がいいぞ」
「へ?」
「そんなキスマークつけてっとバレバレだぞー」
「っ!いつの間に!!」

セフィロスを睨んでも涼しい顔しているだけで全く反省していない様子。
素直にタオルを首にかけてザックスの後をついていった。



□□□



岩陰に隠れながらザックスとセフィロスとアンジールが服を脱いでいく音が聞こえる。
先に入っていた2ndや3rdは野営地へ戻ってもらい、レミが見張りをして男性三人組が入ることにしたのだ。
温泉のおかげで暖かい湯煙が立ち込める中、三人の会話に耳を傾けながら岩を背にして名前はその場に座った。

「いやー、生き返るー」
「セフィロス、先ほどは名前に言い過ぎたこと謝ったか」
「…」
「だいたいな…」
「ザックス命令だ、アンジールの説教を止めろ」
「んな無茶な命令あるかー!」

名前は岩陰でクスクスと笑ってしまう。
アンジールの優しさがくすぐったい。

「しっかし、旦那の体つき羨ましいなー」
「ジロジロ見るな、気持ち悪い」
「アンジールもかっこいーしな、やっぱ1stになると…」
「1st関係ないだろ。全くお前がそんなんだから躾不足だとか俺が言われるんだ」
「へへへーん、そりゃすいませんでしたねー。あれ?旦那の背中…」
「…」
「…」

名前は笑みが引っ込んで血の気が引いた。

「そ、そろそろ交代してくれないの?!」

静かになった洞窟の前に裏声になってしまった名前の声が響く。
するとアンジールから盛大な溜息が聞こえる。

「いつの間にそういうことをしたのか…お前は本当に我慢が足りない。だいたい、あの興奮剤を飲ませる時も…」
「ザックス。貴様のせいでまた説教が始まった、責任取れ」
「ぎゃあ!だ、旦那!俺溺れる」

ザバザバとお湯に頭を押し付けられているザックスに、名前は再び笑いだした。
やっとお湯から上がる音が聞こえて、名前は胸が高鳴った。
とうとう初めての温泉に入れる!

三人が服を着て、名前の前にやってきた。

「あっちー。名前お待たせ」
「楽しそうだったね」
「死ぬかと思ったよ!俺は!」
「余計なこというからだよ」

そう言って温泉に向かおうとする手を引っ張られる。

「一人で入れるか?俺も入ってやろうか?」
「は・い・れ・ま・す!またアンジールさんに説教してもらっててください!」
「ゆっくり入ってこい」

アンジールに言われて微笑みながらお湯の前にやってきた。
すぐに服を全て脱いでお湯の中に体を入れる。

「んー、気持ちー…」

体を伸ばしながら本当に疲れが取れるようだ。
岩に頭を預けて瞳を閉じる。
お湯から出ている顔だけに冷たい風が当たって、気持ちがいい。

ふと、体を見ると鎖骨あたりだけでなく、胸元、腹部にもキスマークが。
なんでこんなキスマークをつけるのか…不思議でならない。

もう一年たったんだ…いろんなことあったなぁ…
ほんの一年と半年前にはスラムに居て、細々と何でも屋をやってて。
その時の自分を思い出すと今との違いに驚かされる。
たった一年とちょっとで、たくさんの友人と、気の許せる同僚と、大切で愛おしい大好きな恋人が出来るなんて。

あの蕩けるようなキスを…キスほんっとうまいよね。いや、まあ他の人知らないからわかんないけど。
その恋人とたった数週間でエッチしちゃって…色んな事教わって…

ざばっとお湯から体を出して、のぼせそうな体を冷気に当てた。
足だけつけながら少しバタ足する。

お母さんに紹介したかったな。
あ、でも、こんな有名人が彼氏なんて言ったらお母さん気絶しちゃうかも。

冷たくなってきた肩を再び温泉に浸らせる。

「名前ー!大丈夫かー?」
「ザックス大丈夫だよー」
「って、セフィロスどこ行く気だ」
「様子を見に行った方がいいだろ」
「お前な…」

アンジールとセフィロスのやり取りに思わず吹き出した。

やっぱりアンジールって面倒見いいよね。
お兄ちゃんって感じ。
1stの中でも一番お兄ちゃんって感じだし、ソルジャーの中でもまとめ役って感じ。

温まった体を温泉から出して、タオルで体を拭いていく。

「もう出ますので大丈夫ですよ」
「…」
「いいのか?セフィロスならちゃんと押さえておけるぞ?」
「ありがとうございます、アンジールさん。これ以上入ってたらのぼせちゃいそうなんで大丈夫です」

濡れた髪を拭きとりながら新しい下着と制服に袖を通す。
やっと明日で遠征も終わる…。

岩陰に顔を出して、ニッと笑いかけた。

「お待たせしてすいません」
「しっかり拭け」
「わわっ」

セフィロスに頭のタオルでガシガシと拭かれる。
ボサボサになった髪の毛を手を梳かして、テントに戻っていく。
2ndも3rdも就寝しているようだったため、本日も1stのテントに名前もザックスもお邪魔した。

「明日は早朝から出発して、車でコスタ、コスタから船でジュノン、また車でミッドガルだな」
「うげー、移動が一番つれー」
「トラックだしねー、体痛くなるよね」

アンジールの入れてくれたココアを飲みながら名前は溜息をついた。
体育座りをして布団の上に座り、後ろからタオルケットを肩にかけてセフィロスがぴったりとくっつきながら座っている。

温かくてちょうど後頭部にセフィロスの胸板があたって、セフィロスの鼓動が心地いい。

「名前ねみーの?」
「温泉ってぽかぽかするから…眠くなんない?」
「確かにポカポカだよな」
「セフィロスなんか半分寝てるぞ」

アンジールが苦笑しながら言うと、名前が後ろを振り返った。

「…何だ」
「ち、近くないですか?」
「今更だろ。離れるな、寒い」
「湯たんぽ代わりにしないでほしいんですけど…」

「…なあ、アンジール。俺も彼女欲しい」
「勝手に作れ」
「だー!俺もイチャイチャしてー!」
「ザックス声でかいよ!」


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