金色の女神
わたしに構わないで  [ 50/83 ]


二人に手を振って再び町に出た。
賑わっている街中で、突然髪を引かれる。

「いった…」
「あんたセフィロスさんの玩具!」
「…」

せめて髪の毛隠すべきだったな。
ブチブチと抜かれて涙目になりながらダイナマイトボディの女を睨みつけた。

「そう玩具なんです。もう飽きられてるので、気にしなくていいですよ」

走って逃げればすぐに距離は置ける。適当な曲がり角で立ち止まって呼吸を整える。
今度は殺気を感じてすぐに後ろを振り向いた。

「何か用?」
「あ、あんたセフィロスさんにちょっかい出してるって女でしょ!」
「…」

もうジュノン歩くには変装が必須になった。
名前は無視してホテルへ向かおうとするが、女は罵声を浴びながらついてくる。

「一度抱かれたぐらいで調子に乗らないで!」
「ふん、一度じゃないから困ってるところよ」
「なんですって?!そんな近くに居るから都合よく利用しているだけよ!」
「…貴女の中のセフィロスさんってそんな悪い男?」
「っ!優しく抱いてくれたわよ!」
「あーそう…」

私と付き合ってから他の女は相手にしていないと聞いた。
つまり、もう一年以上もセフィロスに抱かれてないのに、よくもまだ想える。
私だったらもしかしたら諦めちゃうかも。

「尊敬するわ」
「馬鹿にして!」

後ろから掴みかかろうとするが、簡単に避けて足をかける。

「きゃっ!」
「綺麗なんだから他の男を追いかけた方がいいんじゃない?」
「他の男じゃ抱かれても抱かれても満足できないの!」

あー…セフィロスの追っかけの女の人はみんな言うね。
他の男じゃ物足りないって。
私はセフィロスしか知らないけど…まああんな容姿端麗、強いし、体に直接響いてくるような低い声にみんなやられるのかな。
転んでいる女から走って逃げてホテルへ戻った。

「散々だ…」
「どうしたんだ、と」
「もうセフィロスのファンの女が過激になってきた」
「まあ…この間ジュノンでデートしてたからな、と」
「デート?あのセフィロスがか…」

ルードですら驚くのだからすごいことなのか?

「え、待ってセフィロスってデートしないの?」
「まあ、英雄さんはホテルか会社かでヤることしかしてなかったらしいぞ、と」
「何それ…そうなの?」

自分だけがなんだか特別に思えて、少し嬉しく思う。

「体だけの女だったら別にわざわざ外に連れまわす必要はないからな、と」
「…ルード、貴方はそんな男にならないでね」
「なるわけない…」

語り合いもそこそこに、日も落ちてきたようだし隣の様子を見に行くことにした。

「起きてるか、と」
「離せ!俺は下っ端なんだぞ!あの人が来るわけない!」
「どうだろうね。なんか下っ端思いらしいし」

レノと名前で男に近寄って見下した。

「なんかアクションがあるといいけど」
「スネークさんには頼むから手を出さないでくれ!」
「手を出すも何も…連れて行くだけだぞ、と」

ホテルの電話が部屋に鳴り響く。
素早く名前が出る。

「はいはーい」
『お前ら神羅はほんときたねえな』
「うん、私もそう思う」

レノは首を振って名前から受話器を奪い取った。

「お前がスネークか、と」
『…今の女一体なんなんだ』
「おたくの下っ端を解放してやるからお前は一緒に神羅に来いよ、と」
『…その話に信用性は』
「従わなければ殺すだけだぞ、と」

ははーん。久しぶりに連れ去られた日を思い出すわ。
まあ、私の時はヴェルドもツォンも居たけど。

『…明日、この間の路地裏の奥にある広場に来い』
「了解だぞ、と」
『18時だ。無傷で返してやってくれ』
「保障するぞ、と」

電話を切り、名前は鼻で笑った。

「罠の可能性もあるわね」
「向こうの指定した場所だから100%罠だと思うな、と」
「でも…行くんだろ?」
「仕事だからね」
「仕事だからな、と」

スリプルのマテリアを差出、男に再びかけた。


□□□



翌日、三人でタークスの制服を着こみ、男に背中から銃を構えながら歩かせる。

「何人居るんだろな、と」
「調査では30人ほどだった」
「へえ。なら一人10人かしらね」

そんなことを呟きながら指定された広場へ来た。
ガシャンと金具のドアを閉め、ゾロゾロと廃墟からナイフや剣、銃を持ったギャングが出てきた。
そして名前は笑った。

「誰よ、30人とか言ったの」
「これは予想外だぞ、と」

ぞろぞろと奥から出てくるのはパッと見、50人は超えている。
そんな中から明らかオーラの違う、貫録のある青年が顔を出した。

「俺がスネークだ」
「ソルジャー候補発見したぞ、と」
「誰がソルジャーになんかなるか。お前らはここで…」

スネークが名前に視線をやって口を開けたまま固まる。

「何よ」
「め、女神だ…」
「は?」
「惚れた!俺はお前に惚れた!お前達、あの女は生け捕りだ!」

レノとルードが肩を揺らして笑ってる。

「とりあえず、名前は生きて帰れるな、と」
「帰れるかは微妙じゃない?」
「そうだな、と」

名前は刀を抜き取り、レノはロッドを取り出した。

「さて、仕事仕事」
「終わったら飲みに行けるぞ、と」

タークス三人は地面を蹴り出して立ち向かった。
粗方一掃したが、次々にでてくるギャングたちに息を切らしながら三人で背中合わせに立った。

「ちょっと…ピンチだな、と」
「ほんとだな」
「悠長ね、二人とも」
「お前はまだ余裕そうだな、と」
「さすが…ソルジャー…」
「どーも!」

名前だけで斬りこみに行き、スネークは慌てた様子で手下に叫んだ。

「モンスターを放て!」
「は?なにそれ!」
「やばいぞ、と」

鎖に繋がれて何人ものギャングに引きずられて廃墟からまさかの怒りで我を失っているベヒーモスが現れた。

「ちょっと!あんな繋いで無理やりって!あんたの手下も殺されるわよ!」
「それも覚悟の上だ!」
「っ!レノ、ルード!私があれの相手するから手下はよろしく!」
「頼むぞ、と」
「気をつけろ…」

名前は刀を両手で持ち、振り上げられる鋭い爪を受け止める。
じーんと痺れる手を振りながら攻撃を避け、少しずつ斬りこみながらダメージを増やしていく。
乱れる呼吸のまま動き、最後に頭を切り落とした。

さすがに疲労を感じ、肩で呼吸をしながら刀についた血液を振り払った。
そして、スネークのもとへ行くと両手をあげて膝をついた。

「大人しくついていく」
「任務完了ね」
「さすが名前だな、と」
「ルードもレノもお疲れ」

ジュノンで一泊しようと思ったが、報告をした際に宝条にすぐに連れてくるように命令されたらしくすぐに向かうことにした。
宝条のもとへは行きたくなかったため、レノとルードに任せ、名前は報告書をつくるためにタークス課へ向かった。
ヴェルドへ報告を済ませ、報告書を作成するために書類を取り出した。

今回はなかなかハードだった。
体が思ったよりしんどい…。
報告書を書き終え、提出すると帰宅の許可が出た。

「明日はとりあえず休みだ。それと…ラザード統括よりセフィロスの遠征後の5日間の休暇をと言われた」
「そうそう、ちょっと故郷に行こうと思って」
「一応、休暇を取らせてやるつもりだ」
「ほんと?!やったー!ありがとう!」

素直に喜びながらスキップしてタークス課を後にした。
あと一か月頑張ろう。

そう思いながら帰宅のためにエレベーターに乗り込んだ。
エントランスに降り立つと、目の前にあの受付嬢の女性が目の前に立った。

名前は見せつけるように盛大に溜息をつき、睨みつけた。

「ねえ、私すっごく疲れてるの」
「セフィロスさんと別れたらいいわよ」
「あのねぇ…付き合ってないから」
「とぼけないで。ソルジャー2ndが話してるの聞いたのよ!ソルジャーの社食で…あの人と抱き合っていたって!」

ああ、あの財布を取られた時か…。
確かに抱き合っている風にも見えるかもな。

「私…遊ばれてるだけです…」
「…」
「本当に…セフィロスさんと付き合えたら…どんなにいいか…」
「貴女はどう思っているの」
「好きですよ…彼を嫌いになれたらどんなにいいか…でも抱かれてもない…」
「ふふふ、あなた抱かれてないの?」
「はい」
「本当に遊ばれているだけのようね。身の程を知って近寄らないようにしなさい」
「はい」

立ち去る女性の背中を見て、撃退に成功したことで口角が上がる。
嘘をスラスラと述べるだけで手荒く撃退しないで済むのなら何でも述べよう。

ただ、一つだけ苦しい嘘があった。
嫌いになれたら…なんて。
本人が聞いたら嘘でも激怒しそうだ。

「はあ、なんだかすごく疲れた…」

連日、女性に絡まれまくってる。
精神的にも肉体的にも疲労が溜まりすぎて、まっすぐ寮に向かいそのまま就寝した。


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