ひとりぼっち

 物珍しそうに何人もの子が私を見ている。「誰が教育係りになるのかしら?」「俺は嫌だね、あんなガキ」「俺も」「私も」否応なく耳に入ってくる言葉にどんどん体が小さくなっていき、大粒の涙が零れそうになったときマザーに腕を引っ張られた。

「どこに行くの、ヘンリー。もう案内は終わりよ。さあ、次はみんなに貴女を紹介して、教育係りを決めますよ」

 十人以上の子どもを集めたマザーは、「今日から一緒に暮らすヘンリーよ」とわたしの背中を押す。
 じろじろと観察してくる男の子も、そっぽを向いている女の子も、みんなさっき会った子たちだ。……私の教育係りになりたくないと言っていた子たちだ。

「さあ、ヘンリー。誰に教育係りをお願いするの?」
「あ、えっと、……あの、」

 誰を選んでも正解ではない気がして、口をもごもごさせるとマザーが眉を寄せる。
 早く決めなくてはと慌てると、扉が開いて一人の男の子が入ってきた。
 男の子を指差し、みんなが悪口を言う。「今さら来やがって」「アイツは呼ばれてなんかないのに」「いつも一人でいて、気持ちわるい」

「マザー、わたし、あの男の子が良いです」

 指差した先にいる男の子はビックリしたような顔をし、マザーは嫌そうな顔をする。
 本当に彼でいいのかと言うマザーの言葉に頷き、私の教育係りが決定した。名前は、トム・リドル。



 独りぼっちになった女の子は、同じく一人である男の子に興味を持った。

120502
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