どうして? 両親が交通事故で死んだ。 死ぬということを理解することは出来なかったけれど、もう二度と会うことは出来ないのだと聞かされとても悲しくなった。 どうしてパパとママに会えないの? ヘンリーのことが、嫌いになってしまったの? わたし、いらない? わんわん大泣きすると、大人の顔が歪む。 「こんな子ども、どうするの?」 「うちは無理よ、四人も子どもがいるもの」 「僕のところも余裕なんかないよ」 困った顔をする大人たちの横で、めそめそ泣くことしか出来なかった。 大人たちの話し合いの結果「孤児院」という所に行くことになった。孤児院まで連れて来てくれた大人たちは、マザーに挨拶をするとどこかへ行ってしまう。 知り合いがみんないなくなってしまい、ようやくおさまりかけていた涙が溢れだす。 「まあまあ。そんなに泣かないで」 ぎゅうっとマザーに抱き締められ、ひっくひっくと嗚咽を漏らす。 それから少しして落ち着いてくると、お茶を差し出された。苦い味のお茶に顔をしかめるも、文句は言わずぎゅっと唇を噛む。 「まず、施設を案内するわ。その後、教育係りを選んで貰うから誰にするかきちんと考えておくのよ」 「きょういく、がかり?」 「そうよ。ここには貴女以外にも男の子と女の子がいて、その子たちに孤児院での暮らしを教えてもらう決まりなの」 「あの、でも、ヘンリーはすぐに帰るから、」 「いいえ、もう帰らないのよ。ここが貴女のお家です」 え? という疑問に答えることなくマザーは施設の案内を始めた。 120501 目次/しおりを挟む [top] |