06

 結局あの日、夕飯を口にすることは出来なかった。心配をかけた罰だと、ちっとも心配した様子のないペチュニアおばさんに禁止されたのだ。ダドリーの誕生日だからきっと凄いご馳走だったのよね、とあれから何日も経った今でも名残惜しい。

 ――今日は学校が休みのため、あてもなく外を歩いていた。半年前まで休日は部屋で暇をもてあましつつものんびり過ごしていたが、ここ最近は部屋に居ると必ずといっていいほどダドリーが絡んでくる。ある時は顔面にボールをシュートしてきて、ある時は虫を服の中に忍ばせてきて、ある時はダドリーが壊したカップを私のせいにされて晩御飯抜きになった。小突かれる程度なら我慢できるのだが流石に連日晩御飯がないと成長期の私には辛い。だから仕方なしに外出をしているのだ。
 そうして渋々始めた散歩であるが、今ではそれなりに楽しんでいる。真冬の白銀の世界が特にお気に入りだが、過ごしやすい気候の中を遠くまで探検するのもまたお気に入りだ。人気のない方向へ足を動かしているのは自分の意思であるが気の向くままに歩き過ぎたようで気付けば見知らぬ場所にいた。ここに来るのは初めてだが来た道を辿れば帰れなくはないとさらに足を進めようとするも、ポケット中でカサリと音がして思い出す。無造作にポケットへ手を入れると紙に指が触れたので引きずり出すと、先程まで皺一つなかったそれはよれていた。
 これは今朝、郵便の束に入っていた私宛の手紙だ。サイズの違うダドリーのお下がりの服を身に付けてる私に友達なんておらず、いったい誰からの手紙だろうと封を開けるとホグワーツ魔法魔術学校の入学案内であることがわかる。私に手紙を送る人なんていないわよね、と少し残念な気持ちで案内に目を通してから再び手紙をポケットにしまう。
 何気なく空に視線を向けると日が傾いていた。通りで手元が見にくいわけだ。腕時計を持っていないので正確な時間はわからないが後一時間もすれば夕飯の時間だろう。ちょうど散歩にも飽きてきていたのでダーズリー家に足を向けながら手紙について考えてみる。ハリー・ポッターの読者である私は当然ホグワーツも知っていた。確か魔法の制御やらなにやらを教わるところだ。古い記憶を漁りながらどうやってホグワーツに通うことをおじさんたちに許可してもらうのかしら、と考えるもなるようにしかならないのですぐに考えることを放棄した。私はハリー・ポッターとなったけれど勇猛果敢にはなれそうにないから、これからの物語を気にしても仕方ないに決まっている。

150708

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