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 休日ということもあり、図書室はそこそこ繁盛していた。その中に見覚えのある顔はおらず、ハーマイオニーならいそうだと思ったのに、と思うも、そういえば一人きりになりたかったのだから、顔見知りがいない方が好都合だ。

 手を伸ばしても届かない高さにまで積み上げられている大量の本、本、本。在学中に全ての本を読むことは不可能だろう。いや、ハーマイオニーなら可能かもしれない。図書室の厳しい先生とやらに目をつけられないよう、不自然な動きに気を付けて本を物色する。幻の生き物図鑑という分厚い本をペラペラ捲ると“つちのこ”が載っていた。ユニコーンやら妖精やら、幻の生き物がたくさんいる魔法界でも、つちのこは幻らしい。
 図鑑をもとの位置に間違いなく戻してから興味のある数冊を手に取り、予定通りすぐに図書室を去ろうとしたのだが、隅の、隅にある、無人の読書スペースを見つけた。誰もいない四人がけのテーブルへ近付き、四方を棚に囲われているそこが死角になることを確認する。ほう、ほう。ここなら厳しい先生とやらに見つかることはないだろう。椅子をひいて、静かに腰掛けてから、小脇に抱えていた本をテーブルに乗せる。音を立てないよう、静かに、だ。どれから読もうかしら、と一番ナイスな本を選んでいたのだが、私が持ってきたどの本も、同じ著者であることに気付く。
 ギルデロイ・ロックハート。
 聞いたことのあるような、ないような、ないような。ロックハート……ロックハート……ああ、そうだ。ハーマイオニーが目をハートマークにする人だ。確か、秘密の部屋で登場する人である。ロックハートにはあまり良くない印象が残っているのだが、来年になったらホグワーツにくるのだろうか?
 いや、闇の防衛術はリドル先生が担当しているから、こないかもしれない。現に、今年闇の防衛術に就任しているはずの、えーと……名前は忘れたけれど、頭に顔を生やした、人面頭の先生は、ホグワーツにいない。――というか、今更だが、今更過ぎるが、リドル先生って何者だろう。本来なら、スリザリンの寮監はスネイプ先生だ。名前を言ってはいけないあの人と同じ名前を持つことに気付いてはいたが、深く考えないようにしていた。(自分のことで手がいっぱいで、考える余裕がなかったともいえる。)
 私がリドル先生について知っていることといえば、ハンサムで、怖い。とっても頭が良くて、怖い。クディッチ命で、怖い。怖い、怖い。こんなとこだ。うん、深く考えたところでちっとも意味はないだろうね。

180820

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