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 休暇を満喫した生徒たちは、満足気な顔でホグワーツに戻ってきた。ハーマイオニーもその一人で、いつもより頬の赤味が強いのは気のせいではない。きっと、素敵な休暇を過ごしたのだろう。
 しかし彼女は、寮での生活はあまり充実していないようで、大広間にあるレイブンクローの席で、参考書を一人でペラペラ捲っている。勉強が大好きなハーマイオニーにとっては充実した一時なのかもしれないが、周囲から浮いていた。とはいっても特別仲が良いわけではない私が声を掛けるのも変だ、と無視しようと思ったのだが、小説の中でのハーマイオニーを思い返す。

 確か、トロールだか狼男に襲われたハーマイオニーを助けた事により、ハリーとロンとハーマイオニー、三人の間に絆が生まれたんだっけ。ハーマイオニーはとても頭が良くて、物語の中でいつも助言を与えていた。そう、ハーマイオニーは、とっても、とっても頭が良い。……。邪な気持ちが芽生えて宿題を片手に近付いた私を、ハーマイオニーはすんなり受け入れた。上から目線で物を言うハーマイオニーは、確かに絡みにくい。予めハーマイオニーを知っていなければ、私も彼女を煙たがっていたかもしれない。しかし私はずっと前から、ハーマイオニーを知っていた。

「違うわ、そこは三度回すのよ。二度では生っぽくなるわ」

 参考書をパラパラしながらレポートの間違いを指摘するハーマイオニー。どんな質問を投げてもすぐに答えてくれる彼女は私と同じ人間なのだろうかと疑っていると「珍しい組み合わせだな」とロンが声を掛けてきた。
 休暇中の宿題を教えて貰っているのよ、というと、まだ終わっていないのか、とロンは呆れた顔をする。このレポートの授業は明日だから、今日までに終わらせればいいのよ、と言う私をさらに呆れた目で見てくるロン。これ以上なにかを言ってもさらに呆れるだけだと口をつぐみ、カリカリレポートを仕上げていく。そんな私の隣に腰を下ろしたロンは、テーブルに置いてあるスコーンを、もぐもぐし始めた。
 ちなみに今日は、長期休暇で帰省していたみんなが帰ってきた日の翌日で、早速今日から以前通りの授業が始まり、久々の授業にくたくたになった夜のご飯の最中だ。もちろん私も朝からみっちり勉強したので、くたくたになっていてもおかしくはない。それなのになぜレポートをやるくらい余裕があるかといえば、リドル先生のおかげというか、リドル先生のせいというか。冬休み中に受けた特訓は、私が思っていた以上に身になっていたようだ。

161207

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