32 ホグワーツは冬の休暇に突入し、生徒たちのほとんどは帰省した。私はもちろん居残り組で、トムも居残り組だというのには驚いたがロンも居残り組らしくこの休暇は意外と楽しくなるかもしれない。 話は変わるが、ホグワーツに四つの寮があるのは常識で、入学の時に組分けした寮が卒業までずっと続く。同じ寮の仲間は家族同然であるが、違う寮の生徒とは少なからず壁がある。特に私の所属しているスリザリンは他の寮との壁が高い。それはスリザリンがマグルに対する偏見の強い者が多いせいで、マグル出身であると聞いたら喜んで排除する者がいるからだ。 「(気まずい……)」 それは休暇が始まった朝の出来事だ。朝食を摂るために大広間へやって来たまでは良かった。ロンに会えるかな、とか暢気なことを考えて扉を開いたら、大広間の様子がいつもと違う。通常なら四つの寮に合わせて四つの大きく長いテーブルが並んでいるはずだが、 今日は一つしかない。しかもその唯一のテーブルには生徒だけでなく、いつもなら教師専用のテーブルにいる先生方も腰掛けている。 既にテーブルに座っている生徒の中に顔見知りはおらず、スリザリンの生徒が来たと気付いた他の寮の生徒は嫌そうな顔をして料理をかきこんだ。扉を中途半端に開いたままどうして良いかわからずにモジモジしていると、突如背中に衝撃が走る。驚いて態勢を崩した私は雪崩れ込むように大広間へ入室した。 「ハリー! また先に朝食にいきやがったな」 「と、トム。ハーイ」 「なんで避けるんだよ。こーんなに可愛がってるってのに」 背中に突撃してきた犯人であるトムは、本来なら私が怒るべきシーンであるにも関わらず頭をわしゃわしゃしてくる。ただでさえ癖毛な髪があちこちに跳びはね、非常に迷惑だ。 「ほら、さっさと食べよう」 散々撫でくりまわして満足したのかいつもと変わりないという態度でトムはテーブルの空いている席に腰を落ち着けた。どうやら冬の休暇中はいつもこの席割りらしい。トムの隣に座ってパンにマーマレードジャムを塗りたくっているところでロンが大広間に姿を現した。今起きたばかりであることを主張するかのように髪はあちこちに跳びはねていて、私よりも酷い有り様だ。眠そうな声で挨拶をしたロンのズボンからはみ出ている紅色のシャツを指摘したのだが、ロンはそれを無視して私のパンを奪う。……。仕方ないので今度はブルーベリージャムをパンに塗るとトムに奪われた。……もう! 150827 次のページを開く→ 目次/しおりを挟む [top] |