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 マリーへのお土産を抱えてスリザリン寮に帰ってきた。“帰る”場所として認識するほどここは居心地が良い。ダーズリー家と私は、血こそ繋がっていたが心はこれっぽっちも繋がっていなかった。同じ家で暮らす人間というだけで、そこに私の感情があってはならなかったし、感情を出すとすぐに罰を与えられる。――弁明しておくが、ダーズリー家を恨んではいない。親戚とはいえ他人を家に置いて生活費を出すのは大変だろうし、なにより彼らは暴力を振るわなかった。小突かれることはよくあったけれど。――今まで育ててくれたことに関しては感謝をしているが、ずっとダーズリー家に居たいかと問われたら迷うことなくノーと答える。できれば長期休暇もホグワーツで過ごしたい。もちろん、スリザリンで。

「アリス、具合はどう?」
「うっ……」
「まぁ、とっても悪そう。背中をさすってあげるわ」

 アリスとマリーがベッドの縁に並んで座っているので、その隣に腰をかけてアリスの背中に手をあてる。アリスは金色の透き通る髪が自慢で背中の中程まで伸ばしていた。私もアリスの美しい髪が大好きであるが、背中をさするにはちょっと邪魔だ。髪が絡まないよう気を付けて背中を撫でていると、アリスはますます具合悪そうにする。

「あの、ハリー、言いにくいんだけど……その、あなたが原因じゃない?」
「ハリーから甘ったるい匂いがする……きもちわるい」

 アリスといいハーマイオニーといい失礼である、カボチャの何が悪いのよ、と擁護するとスプレーをかけられる。スプレーをかけた犯人はマリーで、彼女はマグルの消臭剤をシュッシュッと遠慮なくかけてきた。マリーは人一倍体が小さくて、当然お手ても一回り程小さい。そのちんまりした両手で一生懸命に消臭剤の容器を持っているので怒る気も削がれて好きにさせた。気のすむまでシュッシュッしたマリーから消臭剤を没収するとマリーは不服そうにする。

「ハリー、それ私のよ。返して」
「スリザリンでマグルの物を持っていたらいけない事はわかるでしょう。これはもう使わない方が良いわ」
「ハリーまでマグルを馬鹿にするの?」
「違うわ。けど、私がよくても他のスリザリンのみんなは良い顔しない。それはあなたもわかるでしょう?」
「そうだけど、でも、パパとママがマグルだからって馬鹿にするなんてどうかしているわ。私のパパとママは素晴らしい人よ」

 マリーは苦虫を噛んだ顔をする。実はスリザリンにマグル出身の生徒は、マリーしかいない。

150817

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