26

「得点が、何かだって?」
「寮の得点に、決まってるだろ。さてはハリー、入学式に寝てただろ」
「やるなハリー、僕らですら入学式は起きていた。――つまり、得点というのはだね、」
「良い行いをすると、得点が寮に入る。例えばフィルチをからかったりね」
「悪い行いをすると、得点が寮から引かれる。例えばフィルチをからかったりね」

「そして学期末に、得点が一番の寮が優勝さ」
「優勝杯を、貰える。ここ数年はスリザリンのあんちくしょーが勝っているね」
「おい相棒、ハリーはあんちくしょー寮にいるんだぜ。その言い方は良くない、なぁ、あんちくしょー」

 口を挟む間もなくポンポン口から言葉を生み出した二人は、タイミングを打ち合わせていたかのようにプッと同時に笑いだし、ゲラゲラ言ってる。いい加減解放してくれないかしら、という願いが通じたのか騒がしい双子の二つ年下の弟であるロンがやってきて、慣れたように二人を追い払ってくれた。フィルチに尻尾が生えて騒ぎになっている、とロンが言った瞬間走り出した双子が悪戯の犯人だろうが、寮の得点は上と下のどちらに動くのか。下に決まってるだろ、いいえ私なら上にするわ。そんなやりとりをロンとしながら夕食の為に大広間にやってきたのだが――そこで、あり得ない事実が発覚する。

 ロンと大広間の入口で別れてスリザリンの席に行こうとしたのだが、レイブンクローの席で一人食事をしているのは確かにハーマイオニー・グレンジャーだ。先程彼女と会った時は気付かなかったが、ネクタイも青とブロンズであり、レイブンクローのものである。ハーマイオニーはグリフィンドールに入るはずだ、と思ったけれど私もグリフィンドールに入るはずなのにスリザリンにいた。

 ――悪魔の伝染病やら組分けのことやら何やら、ここは私の知っているハリー・ポッターとの違いが多い。

「とは言っても、あまり覚えてないのだけれどね」

 有名な児童書であるハリー・ポッターを家族が熱心に薦めてきたので一度は全巻に目を通したが大まかな流れしか把握していなかったし、なによりハリー・ポッターとして過ごす時間が長くてハリー・ポッターの物語どころかヘンリーのことすら記憶から消えている。記憶は曖昧だし間違い探しをしても仕方ないし、私はハリー・ポッターを忘れるよう努めたがそれは無理な話だった。ハリー・ポッターの代わりとして生きてきた私が今更一人の人間になるなんて天地が引っくり返る。

150813

次のページを開く→

目次/しおりを挟む
[top]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -