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 心臓が口から飛び出してきそうだ。
 組分けの儀式が行われている最中、震える足をどうにか鎮めようとするも上手くいかない。次々に新入生の名前が呼ばれていき、よく椅子まで歩けるものだと感心していると、ついに名前を呼ばれる。ポッター・ハリーと呼ばれた瞬間、ホールは静まり返った。
 他の新入生がそうしたようにホールの一番目立つ所にある椅子の上に置いてあるおんぼろ帽子を手に取る。これを被るとおんぼろ帽子が組分けしてくれるのだ。椅子に座ってから帽子を被ると、頭の中に声が響く。おんぼろ帽子が私に話し掛けてくる。

「グリフィンドール、レイブンクロー、ハッフルパフ、スリザリン……」

 むにゃむにゃとおんぼろ帽子は繰り返し、レイブンクローとハッフルパフは選択肢から消えていく。グリフィンドール、スリザリンと繰り返すおんぼろ帽子は壊れたレコードのようで、ハリー・ポッターの組分けによっぽど悩んでいるらしい。あまりにじっくり悩むので、ガチガチだった緊張が解れてきた。まだ決まらないのかしらと考える余裕が出てきた時、脳裏にロンの映像が浮かび上がる。
 今日会ったばかりだが、ロンは面白い奴だ。ハリー・ポッターだからとかそんな理由ではなく、もっと彼と仲良くなりたい。次いで、頭の中から引き出されたのはハーマイオニーだ。一方的にしか会話をしていないが彼女は私がハリー・ポッターであっても普通に接してくれた。マルフォイとか、ハリー・ポッターとわかった瞬間に態度を変える人が魔法族には多い。それは仕方のないことだけれど、私はハリー・ポッターだけれどハリー・ポッターでないからハーマイオニーの態度がちょっぴり嬉しかった。ハリー・ポッターの小説を知っているからロンとハーマイオニーと仲良くしたいのかと聞かれたらはっきりノーとは言えないけれど、それだけではなく二人と一緒に居たい。そう思った瞬間、おんぼろ帽子はむにゃむにゃ言うのを止めて決断を下した。

「誠の友が得たいと言うのなら、ここしかあるまい」

 帽子が叫んだ瞬間ホールに歓声が上がる。ポッターをとっただとかとられただとかハイテンションな声が行き交う中、私は帽子を置いてグリフィンドールの席を目指す。グリフィンドールの席にはロンがいて、スリザリンが嫌いだと言っていた彼にスリザリンになってしまったと言うとロンは呆れた顔をした。

「ポッター嬢はグリフィンドールに来たかったのか?」
「今からでも遅くない、グリフィンドールに来いよ」

 ロンと似た風貌をした双子はニヤニヤと楽しそうに笑う。がっちり私の脇をガードしてくる双子はグリフィンドールのネクタイをしており、誰だコイツとロンに目を向けると僕の兄貴と紹介してくれた。

150725

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