04

 学年を重ねるごとにセブルスとの仲は悪くなっていった。セブルスは闇の魔術――つまり、あの人に傾倒しているという噂があり、グリフィンドールでの評判は最悪だ。
 セブルスが闇の魔術に通じているという噂は本当だろう。「ハリーポッター」に出てくるスネイプ先生は死喰い人の証を腕に持っていた。だから、彼も死喰い人になるのだろう。
 それでもまさかセブルスが、という気持ちが強くある。セブルスとは幼い頃から一緒に居るが、彼はとても優しく、優秀で、強い。

「ははは!」
「ざまあねえな!」

 中庭から聞こえてくる下品な笑い声には聞き覚えがあった。ジェームズとシリウスだ。声だけで判断が出来るくらい、彼らとは仲が良い。
 何をそんなに楽しそうにしているのだろうと近寄ってみると、なんと、セブルスに呪いをかけていた。傍にいるグリフィンドール生が煽るように口笛を鳴らしている。

「な、っ!」

 あんまりな光景に言葉が詰まる。よってたかって、いじめ。よりにもよって、セブルスを。何かを考える前に体が動いた。
 セブルスの元まで走ると杖を取り出し、飛んでくる呪文を片っ端から相殺する。返しきれない魔法が体を傷つけるが、そんなことに構う余裕はない。セブルスに怪我がないかを簡単に確かめると、腕を引っ張り安全な場所に避難した。

「名前! 飛び出したら危ないだろう!」
「そんな奴に構うな、名前。そいつが“あの人”についてるのは、お前だって知ってるだろ!」

「……ええ、知っているわ」

そう言うとシリウスは満足そうに口を歪める。

「私が許せないのは、一人によってたかって杖を向けていることよ!」

 思ったよりも響き渡った声に、辺りが静まる。
 自分で思っている以上に怒りを感じているらしく微かに震える腕で、杖を振り上げる。「卑怯者!」と杖を下ろすと辺り一体に爆風が起きた。
 私の意識は、そこで途切れた。





 目を覚ますと、医務室のベッドの上だった。ぼやける視界を正そうと目を擦る。
 はっきりした視界に映ったのは、セブルスだった。

「もう、関わるな」

 それだけを言い残し去っていくセブルスの背中を見ていたら、涙が零れ落ちた。






 あの騒ぎ以来、ジェームズたちは普段楽しんでいる悪戯ですらあまりしなくなった。だから、安心していたのかもしれない。

「パンツが見えてやがるぜ!」
「これで少しはこりたかい?」

 デジャブという言葉を今使わずしていつ使うのかというくらい、あの時を思い出させる光景だった。
 二度目ということもあり、すぐに行動に移せたのは、吉か凶か。

「なにをしているの、貴方たち!」

 ビクリと肩を震わせたポッターとブラックが気まずそうに振り返る。名前を呼ぶ気にもならない二人を気にせずセブルスに近寄り、怪我がないかを確かめる。
 ここまでは、前と一緒だったのだ。

「穢れた血め!」

 けがらわしいとばかりに手を振り払い、セブルスは去って行く。
 何が起こったのか理解出来ずに呆然としていると、騒ぎを聞き付けたクヌーサたちが駆け付けてきた。

 よく喧嘩の原因を聞いてみると、セブルスがマグルを、私を、馬鹿にしていたらしい。

 ねえ、セブルス。
 私たち、どうしてこうなってしまったのかしら?

120317
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