02 全寮制という特殊な生活環境にも随分と慣れ、学生を満喫していたある日の午後。 友人とお喋りをしながら廊下を歩いていると、見慣れた後ろ姿を見つけた。思わず足を止めると友人が不思議そうに振り向いたので、幼馴染みを見掛けたことを伝える。 「入学のとき以来会っていないの。少し話をしてきてもいいかしら?」 「ええ、勿論。先に寮に戻ってるわね」 「いってらっしゃい、名前」 「荷物は持っていくわ」 有り難い友人の申し出に甘え、小脇に抱えている教科書を渡す。 そうこうしている間に、目的の人物――セブルスが角を曲がろうとしていることに気付き、慌てて彼を追い掛けた。走ったせいで、角を曲がったすぐのところにいたセブルスに体当たりしてしまう。 「ご、ごめんなさい、セブルス」 「ああ……名前か。久しぶりだな。学校生活は順調か?」 「ええ。魔法って素晴らしいのね!」 呪文が上手くいった、先生に得点を貰った、素敵な友達が出来た。聞いている方はつまらないだろう話にもきちんと相槌を打ってくれるセブルスに笑みを浮かべる。 「名前?」 後ろから聞こえた声に振り返ると、難しい顔をしたジェームズが立っていた。セブルスにくっついたままの体を離し、ジェームズの顔の前で手を振る。 「恐い顔をしているわよ。どうしたの?」 「いや、何もないさ。それより、彼はスリザリンの生徒なんじゃ?」 「ええ、幼馴染みのセブルスよ。セブルス、こっちは同じ寮のジェームズ」 「やあ、初めまして」 「……ああ」 相変わらず人見知りをするセブルスに、クスリと笑う。 「そうだ、セブルス、今度勉強を教えて貰えない?」 入学前にセブルスと勉強をしたことがあるのだが、彼は教えるのがとても上手い。 魔法薬学でわからないところがあるのだけど、とお願いすると、首を縦に振って快諾してくれた。心をこめてお礼を言い「梟を送るわね」と約束をしてから別れ、帰り道が同じであるジェームズと肩を並べて歩く。 「僕だって、勉強くらい教えられる」 「え? でも、悪いわ」 頭が良く、同じ寮であるジェームズに教えて貰う方が効率は良いのかもしれない。けれど、そういった頼みをジェームズは嫌がっていた。だから断りを入れたのだが、ジェームズは不満そうな顔をする。 ……自分を頼って欲しいと思うようになったのかしら? 「今度教えてくれる?」と言った途端に嬉しそうにジェームズは「約束だよ!」と私の手を握った。 120313 目次/しおりを挟む [top] |