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ハーマイオニーの独白
 ハリーのお母さま、名前・ポッターから聞かされた――否、見せられたのはとても信じがたいものだった。銀色の液体を見たときは不思議しかなかったが、その液体の中に入って世界の未来が映し出されたスクリーンを見たときは発狂するかと思った。血生臭い物語を見せた彼女を恨んでいるわけではないけれど、この過酷な試練に自分の息子を立ち向かわせようとする彼女の気持ちがわからない。

「こんなものを見せて私にどうしろと言うのかしら」

 来年起こる出来事は「秘密の部屋」と題されていた。ジニーから日記帳を抜き取れば全ては丸くおさまるのだろが、名前はそれを望んでいないだろう。むしろ秘密の部屋が開かれハリーが解決するのを望んでいると思う。
 きっと彼女は、物語が崩れてしまわないよう私に全てを教えたのだ。イレギュラー、ジェームズ・ポッターが未来を変えてしまわないように私に知恵を授けたのだ。
 いい迷惑だと思いつつ胸が弾んでいるのはこの状況を楽しんでいるからだろうか。





エバンズの独白
 二年から六年までは全て上手くいった。ジェームズは、なんとかハリーを救おうとしていたがハーマイオニーが上手く立ち回ってくれたのだ。――だが、そろそろ限界がきてしまったようだ。
 セドリック、シリウス……彼らが死ぬことを知っていながらも見ぬふりをしてきたハーマイオニーの精神は参ってしまったようだ。後少しというところまできているというのに、ハーマイオニーは壊れかけている。
 だが、ハーマイオニーがここまで頑張ってくれたのは予想外で、彼女が途中で放棄していたかもしれないことを考えれば上出来だ。……多分、ハーマイオニーも恐れていたのだろう。未来が変わってしまったらその先の未来――ハリーがヴォルデモートを倒すという未来まで変わってしまう恐れがあることを。

「ハーマイオニー、今までありがとう」

 ゴーストならば使うことのできないはずの魔法でハーマイオニーの記憶を書き換えた。彼女が罪悪感を持たずに済むように、彼女がもう苦しまないように。



「私って酷い人間ね。自分でやるのが怖いからハーマイオニーに押し付けていたのだわ。……でも、そろそろ向き合わないと」

 ハーマイオニーの頭から抜き出した記憶の中に滑り落ちる。改めてこれからのことを確認し、遠くを見つめた。

 ……本当はゴーストになどなりたくなかった。あのまま安らかに眠っていたかった。
 未来が変わってしまう恐れがあるとき、どんな形でもいいから私を蘇らせて欲しいと頼んだ願いを叶えてくれたのがダンブルドア先生だった。
 今の私は魔力の塊で、普通のゴーストとは違い――厳密にはゴーストとも呼べない曖昧な存在だからからこそ無機物には触れることができ、自分を削って魔法を使うこともできる。そして魔力が切れたとき、私の存在はこの世から消え去る。

 物語が終わったら魔力を使い切って消え去るつもりだった。だが、一度この世に舞い戻って未練ができてしまった。……まだ、生きたい。今の状態を生きていると言えるのかはわからないけれど、消えてしまいたくないと強く願うようになった。

 こんな気持ちを持つくらいならあのまま静かに寝ていたかった。ジェームズの、ばか。

120527
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