01

「好きだ。付き合ってほしい」

 グレーの瞳が、私を映している。大好きな彼、シリウス・ブラックに受けた告白はなによりも素敵な宝物となり、一週間後に私は返事をした。短気な彼が一週間も待ってくれたことは奇跡に等しく、それだけ私のことが好きなのかなと自惚れてみたり。
 私もシリウスが好きであると告げたとき彼の表情は輝き、けれど次の言葉を聞いた瞬間に歪む。

「だから、付き合えません。ごめんなさい」

 理由を問い詰めるような言葉をシリウスが言ったような気がするが、曖昧に笑って背を向ける。――シリウスが本当に好きだからこそ、シリウスとは付き合えなかった。近づくということは、とても恐ろしいことだ。飽きられるかもしれない。嫌われるかもしれない。他に目移りをされるかもしれない。……考え出したらキリがないほど恐ろしいことだらけで、一週間悩んでもそれらを打破する方法は思い浮かばなかった。

「ヘンリーの考え、わからないな」

 そう言うリーマスは得体の知れないものを食べたかのような妙な顔をしている。

「リーマスだって同じことをするわ。好きな人に告白されても、絶対断る」
「それは僕が特殊だから。でも君は、負い目なんてないだろう?」

 少し声を下げたリーマスの言う負い目とは、月に一度狼になってしまうことだろう。

「人狼だから好きな人とは付き合えないっていうの? ……どうして人狼は付き合えないの?」
「人狼は恐ろしい生き物なんだよ。満月の夜になると理性を失って……」
「今更そんなことを聞いているんじゃないわ。どうして人狼だと好きな人と付き合えないの?」
「だからそれは、」
「人狼じゃなかったら、付き合えるの?」

 ヒュッとリーマスが息を呑んだ。苦しそうにまつげを震わせるリーマスを見て自分の失言に気づき口に手を当てる。人狼でなかったら、なんてとても無神経な発言だった。彼がどんなにそれを望んでいることか。

「ごめんなさい。……でもね、リーマス。付き合うっていいことばかりじゃないと思うの。だからシリウスとは付き合わない」

 目を閉じると、昨日のことのように蘇ってくる出来事は軽い私のトラウマになっていて、胃が締め付けられるように痛む。あんな思いをもう一度したら、私は生きていけないだろう。

150313
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