06

 キッチリ閉めた扉が開かれる。顔を覗かせたのは理科のねちっこい教師――ではなく、銀色の髪を揺らす青年だった。ニヤニヤと笑う彼は、どうやら理科教師の声を真似て私を脅かしたらしい。最低だ。
 質の悪い悪戯をした人物は、本来ならテニスコートにいなければならないテニス部レギュラーの仁王雅治である。なぜここにいるのかという疑問に、彼は答えることなく、私の隣をすり抜け教室の中に入っていく。

「へえ、こんな教室初めて来た」
「…………」
「見晴らしがいいのぅ。……ほう、テニスコートも丸見えじゃ」

 からかいを含む声音に顔が熱くなる。

「べ、別に幸村を見てるわけじゃないんだからね!」
「ククッ、誰もそんなこと聞いてなか」
「……っ」
「幸村は、この教室のことを知ってるのか?」
「…………知らないと思う」

 吐き捨てるように言ったというのに、仁王は私の返事に嬉しそうにする。「二人だけの、秘密じゃのぅ」という仁王の真意がわからず眉をしかめると、彼は意味ありげに笑みを深めた。仁王がなにかを企んでいるということは伝わってくるが、肝心の“なにか”がわからない。しかし、いくら仁王の本音を探しても見つけることはできないと知っているので、早々に彼のことを考えるのは止めた。

130302
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