ベッドに体を横たえた彼女の上瞼と下瞼はくっついていて、俺の呼びかけに反応しないことからも、彼女が眠っていることがうかがえる。しかも、ただ眠っているだけではなく、額に真珠のような汗を浮かばせ、苦しそうに眉を寄せている彼女は、なにやら魘されているようだ。目から次々と流れていく涙に指を這わせると、背筋がぞくぞくとした。

「なんで、泣いてるん?」

 返事がないことをわかっていながら問いかける。うわごとのように繰り返される言葉を繋ぎ合わせると、「わたしは、家族じゃない」、そう、彼女は言っていた。そこで初めて、俺は彼女の苦しみを知った気がする。
 俺より大人びていて、時には母親よりも頼りにしていた姉であるが、彼女はとてもか弱い生き物だと気づいた瞬間でもある。触れたら壊れてしまいそうなほど弱っている彼女に、二年経ってようやく気づいた俺はどんだけアホなんやろうか。小刻みに震えている彼女の手を両手で握り締め、今まで守ってもらっていた分も……いや、それ以上に、彼女を守ろうと、支えていこうと誓う。その涙を笑顔にするために、さて、なにをするべきか。彼女は、早ければ半年後に関東に旅立ってしまう。俺に残されている時間は短いが、それでも絶望はなかった。

130317
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