「自分の姉ちゃん、関東の高校を受験するんやてな」

 姉ちゃんという言葉を使うことがなくなり二年の歳月が流れた。あんな姉は姉ではないと思っていたし、彼女がどこを受験しようと俺には関係がない。それだというのに、おかんに真相を問い詰めにいった俺はなにがしたいんやろう。

「謙也、知らんかったんか? ヘンリーは、神奈川にある立海大附属高等部を受験するんやで」
「……は? ほんま? アイツ、家族とちゃうから、追い出すん?」

 するりと口から滑り出た言葉は悪気があったものではなかったが、無神経な言葉と自分でも思った。だから、口の中が切れるほど強く頬を叩いたおかんに怒りなど感じてはいない。それよりも、俺の頭を埋め尽くしていることがあった。

 ――関東の高校を受験するということは、この家から通うことはまず無理だ。つまり、彼女は一人暮らしをすることになるのだろう。二年間まともに言葉を交わしていない双子の姉が関東へ行く。ただ、それだけのことだというのに頭を鈍器で殴られたかのようなショックを受けた。

「なあ、姉ちゃん」

 久しぶりに訪れた姉の部屋の扉をノックしても返事はなく、代わりにうなり声が聞こえてきた。遠慮がちにドアを開き、そこにいる姉を見て目を見開く。

130315
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