1 双子の姉やと言われて一緒に育ってきた姉ちゃんは、姉ちゃんやないらしい。難しいことはよくわからんけど、姉ちゃんは姉ちゃんやないんやって。 「ほんまの姉やなくても、ヘンリーはヘンリーや。やから、今まで通りでええんやで」 おかんの言葉に首を縦に振るも、意味を理解してなどいなかった。――しかし、夜遅くまで家に帰ってこなかったり、家にいても布団にくるまっている姉ちゃんを見て、少しずつ理解していく。けど、姉ちゃんが姉ちゃんやないとか、そんなんはどうでもよかった。それより、なあ、なんで目を合わせてくれないん? なんで、前みたいに話してくれないん? なんで……笑ってくれないん? いくら言葉を重ねても、姉ちゃんの心に響くことはなかった。 様子のおかしい姉ちゃんに、俺は腹が立っていた。なんで無視をされなければならないんだと苛々して、おとんとおかんの悲しそうな顔を見るたびに姉への嫌悪は増していく。 「なあ、なして無視するん? なんかあるなら、そう言えや。俺ら家族やろ、そういうん気分悪いんやけど」 姉ちゃんの肩を掴み、低く唸る声でそう言った。前までなら噛みつくようにして言い返してきた姉ちゃんだが、今の姉ちゃんは酷く怯えたように瞳を揺らし、目を伏せてしまう。なあ、いくら双子やって、言葉にせんと伝わらないもんなんやで? 130315 目次/しおりを挟む [top] |