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 歯の多いブラシで慎重に髪をとかす。寝癖で乱れていた髪がきちんと下を向いたことを確認し、そこでようやく、部屋の中央でコチコチ音を鳴らす時計に視線を向けた。予想よりも時間がくわれていることに気づき、大慌てで鞄を掴む。早く行かないと、彼を待たせることになってしまう。
 春の手前というこの寒い時期に、外で彼を待たせることは避けたい。いくら待たせようと彼は笑顔で「大丈夫」と言うのだろうけど、私の方が大丈夫ではない。もしそんなことをしたら、自分で自分を罵りたい気分になる。

 起きてから一番に食事は済ませていたので、パンを加える必要も、食いっぱぐれもしなかった。肩に掛けた鞄がずり落ちてこないよう両手で握り締め、いつもの通学路をひたすらに走る。目的の場所には数分も経たずにたどり着き、そこにはすでに彼がいた。パーマをかけているわけでもないのに綺麗なウェーブを描く彼の髪が、朝日に照らされ輝いている。走る私に気づいた彼の二つの瞳が私を映す。彼の目に映ったというだけで、体が蒸発しそうになる。トクントクンと鼓動が脈打ち、柔らかに笑う彼を見て顔が熱くなった。

「おはよう」

 ああ、今日も一日が始まる。

130228
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