私につられるかのように泣き出した謙也の目はうさぎのように赤くなっている。それを財前クンがからかい、私は二人を見て呑気に笑っていた。バスの後部座席を陣取った私たちは、真ん中に私が座り、右に財前クン、左に謙也が座っている。なぜか二人に握られている手は、もう気にしないことにした。

「へえ、ほなヘンリーさんは関東で一人暮らししとるん?」
「お母さんがしょっちゅう泊まりにくるから、一人暮らしっちゅうんかはわからんけど、せやね。一人暮らししとる」
「ふーん。それは、血が繋がっとらんから……謙也さんたちに気を遣って一人暮らししとるん?」
「…………」

 聞きにくいことをよくもまあ直球で聞いてくるなと肩をすくめてみせると、謙也が財前クンの頭を叩いた。もうちょいデリカシーを持てと、私を挟んで財前クンに説教をしている謙也を見て小さく笑う。

「中一のときに自分が他人やって、ほんまもんの家族とちゃうって知ったんやけど、そんときめっちゃ怖かった。忍足家にいたらあかんかもって、悩んだ。お父さんもお母さんも、私は自分の子どもやって言うてくれるけど、ようわからんし。やからな、少し距離を置きたくなって高校は関東に行ったん」

 懐かしいな、と三年前のことを思い出して眉を少しだけ下げた。

130313
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