荷物を持つという謙也の言葉に甘えてキャリーバックを手渡したところで、体に絡みつくような視線に気がついた。視線の主である、びっしりと耳にピアスをつけた青年と目が合い思わず怯むと、思い出したというように謙也は、ピアスびっしりの彼を紹介し始める。え、謙也の友達? いつからこんな不良と付き合うようになったの謙也。いや、でも、見た目だけなら謙也も不良っぽいかも。パツキンだし。

「部活の後輩の財前光や。なんや知らんけどついてきてん」
「謙也さん、誰っスかこの人」
「コラ! 人を指差しちゃあかんやろ! 自己紹介くらいしたらどうや」
「いたっ……謙也さんが部活終わりに用事があるーっちゅうてマッハで着替えとるから気になってついてきた財前です。――で、自分は謙也さんの彼女かなにかですか?」

 目の前でポンポンと交わされる会話に目を瞬かせているも、“彼女”という単語だけで顔を真っ赤にする謙也はウブすぎやしないだろうかと少しだけ呆れた。そんなとこも可愛いのだが。
 顔を染めた謙也を見てかどうかはわからないが、財前クンはなにやら勘違いをしたらしく、じっと私を見ている。少しだけ伏せられている財前クンの目は睨んでるように見えるが「へえ、これが謙也さんの彼女」と呟く声のトーンからして、これが彼の素なのだろう。

130310
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