12 「最近、一緒に食事をすることが多いね」 今日は陽射しが暖かく、風もないので、中庭で食事を摂っていた。母親が作ってくれた弁当を箸で摘みながら、幸村に視線を向ける。すると、少し眉を下げた幸村が「迷惑だった?」と悲しそうな表情をするので、そこで、またやってしまったと気づいた私は、慌てて口を押さえ首を横に振った。凛と食べるのも楽しいが、普段クラスが違う幸村と食べられるのも嬉しい。たどたどしいながらも気持ちを幸村に告げると、彼は態度を一変させて笑みを浮かべる。 「うん、知ってる」 「そう、知ってるなら…………ん? 知っているなら、なんでわざわざ聞いたの」 「ヘンリーの口から本音が聞きたかったから」 笑顔でのたまった幸村にさっきの悲しそうな表情も演技なのかと顔をひきつらせる。けれど心底嬉しそうな表情をしている幸村を見ていると怒りは萎んでいってしまい、箸に挟んだままの卵焼きを口に運んだ。 「そうだ、ヘンリー、今日の朝はなにしてた?」 「んん? 別に、いつも通りだけど」 「……そっか」 いつも朝練を見に来て欲しいと催促する幸村だけど、私は一度も彼の朝練をしている姿を見に行ったことはない(例の教室から覗き見ることは常であるが)。しかし、幸村は朝練を見に行かなかったことへ対し文句を言うことも、こうして朝になにをしているの問いかけてくることも今まで一度もなかった。少しだけ眉間に皺を寄せている幸村は、なにを考えているのだろうか。 130307 目次/しおりを挟む [top] |