11

 朝のホームルームが始まる予鈴が鳴るまで凛と言い合いを続けた幸村は、名残惜しそうに私の手を握り締めてから教室に戻っていった。結局彼はなんのために私の教室へ来たのだろう。頭の上に疑問符を飛ばしていると、凛も自分の席へと帰っていった。

「おはよう、みんな。……さ、出席をとるわよ」

 事務的な挨拶をした担任(女)は名簿を片手に生徒の名前を呼んでいく。そうしていつものように始まった一日は、気がつけば、お昼になっていた。
 ――鞄から取り出したお弁当を手に、幸村の教室に行こうか悩んでいた。凛には今日も幸村と食事をすることを告げていて、教室から動こうとしない私の背中を押してくれる。しかし、私にとって他のクラスを訪ねることはなかなか勇気を要することで、決心が固まらない。

「ヘンリー」

 耳に優しく響く声に顔を上げると、いつもの笑みを携えた幸村がヒラヒラ手を振っている。青いバンダナに包まれた弁当を片手に入口で待っている幸村に小走りで近寄ると、弁当を持っていない方の彼の手が私の手を握り締めた。顔に集まってくる熱をやり過ごそうとしているうちに手を引っ張られる。顔の赤みを気にする余裕もなく、彼に置いていかれないよう、慌てて足を動かした。

130305
目次/しおりを挟む
[top]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -