「こんな子ども、どうすんだよ」
「俺が育てる!」
「ばっかじゃねえの、お前に子育てなんか無理に決まってらァ」
「そうね。それに、孤児を見つけるたびに拾っていたら……あら、目を覚ましたのね、おはよう」

 にっこりと天使のような笑みを浮かべるナース服のお姉さんが伸ばしてきた手を払い落とす。目を見開いている彼女を無視してそばかす男に手を伸ばすとすぐさま彼は傍に寄ってきてわたしを抱き締めた。ぐりぐり乱暴に頭を撫で回す男の笑顔は太陽のように眩しい。

「エース、もっと優しく触ってやれ」
「ん? こうか?」
「ちげーよ。やっぱりお前に子育てなんて無理だ」
「でも、もう船は出航してしまったし……仕方ないからナース仲間で交代しながら面倒をみるわ」

 そう言ってわたしをそばかす男から受け取ろうとするナース女の腕から逃れるように身をよじる。けれどそれは些細な反抗にすらならずあっさりナース女に体を捕まえられ、最後の抵抗としてそばかす男の服を両手でぎゅっと握り締めた。

「あら……? エースから、離れたくないのかしら?」
「なら、やっぱり俺が育て、」
「駄目よ、この子を死なせるつもり?」
「うっ……」

 そばかす男は、あっさりとわたしを離してしまった。プツンとなにかが切れてしまったかのように大泣きをしたわたしの体がふわりと浮き上がる。わたしに合わせるように部屋にある全ての家具が浮かび上がり、縦横無尽に飛び回るそれらは部屋からわたしとそばかす男以外を追い出す。空中からゆっくり地面に落ちていくわたしを抱き締めたそばかす男の腕の中で、私は満面の笑みを浮かべた。

130223
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