わたしが笑顔になるとみんなが笑顔になるの。とっても素敵よね。でも、ある時、いくらわたしが笑ってもみんなが笑ってくれることはなかった。悲しくなって大声で泣いてもみんなは眠っていて、わたしのことなんて知らん顔。寂しくて苦しくて、みんなに構ってほしくて……わたしは最後の力を振り絞って笑った。みんなが大好きだといってくれた笑顔で笑う。一筋の涙を流しながら。

「おい! 赤ん坊が生き残ってるぜ!」

 聞こえてきた声は耳に馴染みがなく、その声の人物はわたしを抱き上げた。いや、抱き上げるというにはずいぶんとお粗末な抱え方だ。猫かなにかと勘違いしているのか首根っこを掴んでわたしの顔を覗き込むその人物の顔にはそばかすが散らばっていて、手を伸ばして頬を撫でると男はとても驚いたような顔をする。それでも構わずに撫で続けているとぎゅっと抱き締められて男の胸板に顔が埋まった。

「お前は俺が守ってやるから安心しろ」

 決して大きな声ではないというのに力強いその言葉に、胸に安心感が広がる。ママやパパに抱き締められたときと同じような安心感に今までずっと流れていた涙が止まり、次第に深い眠りの波が襲ってきて、逆らうことなく目を閉じた。

 ゆるり、ゆらり。目を閉じる間際、彼が泣きそうな顔で笑っているように見えたのは、泡が見せた幻想?

130222
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