自宅と兼用しているW.W.W.店を後にした僕たちが目指す場所は、近所にある喫茶店“ツイン”だ。カランカランと音を鳴らし扉を開ける。シンプルな内装をした室内から出てきたのは、真っ白なエプロンをつけた二人の美女だ。僕たちと同じように瓜二つの顔を並べた彼女たちは、笑顔で頭を下げる。
 美人姉妹が経営をしていると有名なツイン店。美人という売り文句は大袈裟ではなく、彼女たちは本当に綺麗な容姿をしている。

「喫茶・ツインにようこそ」
「当店のご利用は初めてでしょうか?」

 二人は、にこりと同じ顔で笑う。

「ああ、初めてさ」
「本日は、当店をお選びいただきありがとうございます。私は姉のヘンリーです」
「妹のパドマです。――当店では、魔法の使用を一切禁止しております」
「魔法を使用した場合、いかなる責任も負いかねますのでご了承ください」
「では、お席にご案内します」

 同じ角度で会釈した二人は、店の奥にある席まで僕たちを案内すると、メニュー表を置いて他の接客を始める。
 存外そっけない対応だと眉をしかめると、僕が不機嫌になったことに気づいたジョージがケラケラ笑う。

「相変わらず、ベタ惚れだな」
「……違うよ、ヘンリーがまるで初対面のように振る舞うから、焦れったいっていうか――」
「客としては、初対面だろ? プロ意識の高い、いい女じゃんか」

 からかいを含んだジョージの声音に、眉間の皺が深くなる。それをまた笑われる前にと、ウエイトレスに声をかけた。

「注文、いいかい?」
「はい、ありがとうございます」
「……いい加減、それ止めろよ。俺は恋人だろ?」
「あら、そう? たまにはこういうのも楽しいと思ったのだけど」
「俺は楽しくない。ほら、早く注文」
「はいはい」

 少しだけ表情を崩したヘンリーは、手に持つ羊皮紙に僕たちが注文する品を書き込んでいく。すぐに持ってくると言葉を残して奥の部屋に消えていったヘンリーは、一分と経たずにまた店に姿を現した。僕たちが頼んだ品を間違いなく運んできた彼女は、それらをテーブルの上に並べていく。

「お待たせいたしました。ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「……全然待ってないけど、うん、注文に間違いはないよ」
「ふふ、待たせないことがうちの店の自慢なの」
「へえ、魔法を使っているのか?」
「それは企業秘密よ、ジョージ」

 可愛らしくウインクをしたヘンリーは、客に呼ばれて行ってしまう。名残惜しく思うも、仕事だから仕方がないと頭を振り、彼女が用意してくれた食事に手をつけた。

130318
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