闇の勢力が退いた今、必要なものがある。そう、それは“笑い”だ。ヴォルデモートがいなくなったからといって、皆が幸せになったわけじゃない。全てが平和になったわけじゃない。ヴォルデモートとの決戦では、数え切れない人が命を落とした。信頼していた人が実は死喰い人だった、なんて残酷な話も珍しくない。だから僕は、僕たちは、人々に笑顔を与えることに必死になっていた。……ハリーとの約束もあるしね。
 W.W.W.店は遠い場所からも客が訪れる、ちょっとした有名店になっていた。ホグワーツの教師には煙たがられているけど、そんなことを気にする僕たちじゃあない。昨日も入れ替わり立ち替わり人の訪れたW.W.W.店だが、今日は静寂に包まれていた。これは、客がこないのではなく、今日は一日店を閉めているためだ。――そう、僕たちは今日一日店を閉めて行かなければならない場所がある。

「相棒、準備はできたかい?」
「もちろんさ。手土産は、これでいいかな?」

 ジョージがヒョイと手に取ったのは、先日開発したばかりの悪戯グッズだ。手に収まる程度の大きさをしているそれは頭髪用スプレーで、七つの色に髪を変えてしまう代物である。これなら彼女も喜んでくれるだろうと頷き、包装紙でラッピングをしていく。ふんふん鼻を鳴らしていると、ジョージに笑われた。

「ご機嫌だな」
「愛しい人に会えるんだから、当然だろ」
「ふーん、そんなもんか?」
「そんなもんだ。ジョージもさっさとガールフレンド作れよ」
「ああ、うん、そうだね。そのうち」

 面倒そうに返事をするジョージには当分恋人なんて期待できないんだろうなと頭の片隅で考えながら、小綺麗にラッピングされた袋をポケットに突っ込み、手早く店の戸締まりをした。

130317
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