オマケ 全ての闘いが終わった。ヴォルデモートは敗れ去ったのだ。 ヘンリーの遺体の横には彼女の双子の妹が寝かされていて、二人は同じ顔を並べて安らかに眠っている。 永遠に覚めることのない眠りについたヘンリーの前に跪いて泣き叫んだ。周りの目なんか気にせず涙が嗄れるまで泣き喚いた僕の隣にやってきたのはジョージで、酷い有り様の僕の顔を見て困ったように笑った彼はローブで乱暴に僕の顔をこすった。 「ひどい顔だね、相棒」 「っ……ヘンリーは、僕を守って死んだんだ。僕がいなければ彼女は……!」 「フレッド、彼女の顔を見てごらん。……誇らしげな死に顔だろ? そんなことを言ったら、ヘンリーの誇りを汚してしまうよ」 「でも……!」 かすれる声で叫ぶ僕の肩にジョージの手が乗る。目の前にある自分そっくりなジョージの顔を見て(ジョージの片耳はないがそれ以外は僕と瓜二つだ)、ヘンリーと喧嘩したときのことを思い出した。 ――あまりにも彼女が僕とジョージを間違え、それに僕が怒ったことが喧嘩の始まりだった。僕はヘンリーとパドマを間違えたことなんてないというのに、彼女は三回に一回は僕とジョージを間違える。 「いい加減、僕らの区別くらいしてくれ」 「だってそっくりなんだもの」 「僕は君と妹を間違えたりしない」 「パドマはレイブンクローのネクタイをしているのだから間違いようがないでしょう。……だいたい、誰も見分けられないことをいいことにいつも悪戯しているくせになによ。ねえ、ジョージ?」 「ははっ、フレッドが口で勝てないなんて珍しいな」 「ジョージは入ってくんなよ」 ニヤニヤ笑うジョージを押しのけてヘンリーと向き合うと、彼女は面倒くさいという顔をする。 「なにが不満なの?」 「ボーイフレンドを間違えて飄々としてる君が信じられないのさ」 「私だって間違えたくて間違えているわけじゃないわ。……だいたい、似ていることはいいことじゃない」 睫を伏せてヘンリーが呟いたことは、彼女のコンプレックスに触れるものだった。 見た目以外でヘンリーとパドマを双子と連想させるものはなく、自覚をしていないようだがヘンリーはそれをとても気にしていた。似てない双子だねと言われるといつも頬の筋肉が引きつるのだ。 「あなたたちは、なにもかもが似ているわ。きっと死ぬときも一緒なんでしょうね」 羨ましいと、彼女の瞳が言っていた。 「死ぬのが一緒なのは、君たちじゃないか」 満足そうな顔をしているヘンリーの頬に指を這わせると温もりが伝わってくる。パドマもほとんど同時刻に息を引き取ったので、彼女からも同じだけ温もりが伝わってきた。 130118 目次/しおりを挟む [top] |