2 「チャンに断られた?」 絶望したような顔をしているハリーに詳しく話を聞いてみると、チャンはセドリックに誘われているのだとか。セドリックは大会のライバルだけでなく、恋のライバルでもあるらしい。自棄になったハリーが私をダンスパーティーに誘ってくる。あんまりな状態のハリーに同情し、行動を起した。 「私とダンスパーティーに行こう」 驚いた顔をしているセドリックにもう一度同じことを繰り返す。 「僕が誘ったとき、ハリーのライバルと組めるかって断ったのは誰だい?」 「事情が変わったんだ。チャンにはハリーがパートナーになる。だから私と行こう」 「君がそういうなら」 ■ ダンスパーティー当日である今日になってもハーマイオニーのパートナーは誰かわからなかった。きっと、誰も誘えなかったんだろう。……ぷ。いやいや、笑ったら失礼だな。 ママが買ってくれたオレンジ色のドレス(古着なのに高かったらしい)に身を包み、フレッドとジョージに髪をセットしてもらう。化粧は自分でして、ストールを羽織っていたら男子寮から美男子が降りてきた。あんな男子いたかなと首を傾げていたら、なんと―― 「ハーマイオニー!?」 見違えるような格好良さだ。「女みたいな名前の上に、女みたいにヒョロヒョロだよな!」と、からかうことはもう出来ないだろう。 「ハーマイオニー……君、いい加減誰と行くのか教えてくれても……、」 「私が誰と行こうとお前に関係ないだろう」 酷い言い種に、ドレスにも関わらず地団駄を踏んだ。なんなんだ、アイツ! どうせ強がってるだけで相手なんかいないんだ! フレッドとジョージに八つ当たりをして寮を出ると、セドリックが待っていた。広間で待ち合わせをしていたのにどうしたのだろうと首を傾げると「君に早く会いたくて」とはにかむセドリック。ドクリと心臓が跳ねた。 綺麗だよ、と褒めてくれ、スマートにエスコートしてくれるセドリックに機嫌はうなぎ登りになる。 「代表選手はこちらに」 マクゴナガル先生の指示で代表選手とそのパートナーが並べられる。その中にハーマイオニーの姿もあった。美しいフラーがハーマイオニーのパートナーらしく、ビックリして目を白黒させているとハーマイオニーに鼻で笑われる。 「ヘンリー?」 「え? ……あ、ごめん。何か言った?」 「ダンスも疲れただろ? 中庭に行こう」 ハーマイオニーに気をとられていたらパーティーは中盤にさしかかっていた。セドリックに促されるままに中庭に行く。 「ヘンリー」 甘い声で名前を呼ぶセドリックの顔が近付いてくる。脳裏をちらつくのは、ハーマイオニーだった。彼はフラーと――。重なった唇から伝わってくるものは何もない。 抱き締めたりキスしたり好き勝手してくるセドリックを放置していたが、ハグリッドの姿が見えたので静かにするように言う。ハグリッドの秘密を予期せぬ形で知ってしまった。 セドリックにようく口止めをして別れると、すぐさまハリーに報告しに行く。 「君はセドリックと良い雰囲気だったわけだ」 「それは関係ないだろ。それよりハグリッドが、」 「ああ、わかったよ。でも、ハグリッドが半巨人だからってなんだ。ハグリッドは僕たちの友達だろう」 「それはそうだけど、」 「疲れてるから、おやすみ」 ハリーはチャンと上手くいかなかったらしく、機嫌が悪い。寮に帰っていくハリーをおとなしく見送った。暫くして、ようやく戻ってきたハーマイオニーにもハグリッドのことを伝える。ハリーと同じような反応をするハーマイオニー。 「話はそれだけか? なら私は寮に戻るが、」 「待って! ……フラーとは、どうだった? ま、まさかあんな可愛い子と上手くいくわけ、」 「彼女は素敵な女性だよ」 ドスン、と頭に重りを落とされた気分だった。何も考えることが出来ず、どうやってベッドに潜り込んだのかも覚えていない。 120510 しおりを挟む/目次 [top] |