成代ロン1

 ママとのお別れが長かったせいか空いているコンパートメントはなくなってしまった。仕方なく相席を頼んでみてもどこも満席ばかり。
 少し苛々しながら最後尾の扉を開いた。

「あー……ここ、座ってもいい?」

 痩せ細った、髪がくしゃくしゃの男の子……いや、もしかしたら女の子かも。とにかく、人間が一人しか居ないことに安堵して、相席を申し込むと快く承諾してくれた。
 トランクを引きずり込もうとするとコンパートメントの入り口のところで突っ掛かる。無理矢理引っ張っていたら、ひょい、とフレッドとジョージが持ってくれた。

「やあ、ハリー。こいつはヘンリー、僕たちの妹さ。可愛いだろう? ああ、僕たちの自己紹介もまだだったね」
「僕がジョージで、こっちがフレッド。見ての通り双子さ」

 私の両肩に腕を乗せてくる双子をコンパートメントから追い払う。黙っていたらここに居座っていただろう二人の背中にあっかんべーをして椅子に座る。

「ごめんよ、あの二人が煩くて」
「ううん、平気だよ」
「ねえ、君って本当にハリー? ハリー・ポッターなの?」
「そうだよ」
「うわあー」

 双子が嘘を言っているのだと思っていたが、本物のハリー・ポッターらしい。ジロジロ見ているとハリーは萎縮していき、ごめん、と軽く謝りポケットからスキャバーズを取り出した。

「ハリーはペット連れてきた? こいつ、スキャバーズっていうだけど、役立たずな鼠なんだよね」

 つついても無反応なスキャバーズ。本当に生きているのかも怪しい。それに比べハリーの見せてくれた梟の美しさは目を見張るものがある。私の家ではとても買うことなど出来ないとぼやいたら、これは誕生日プレゼントに貰ったんだとハリーは言っていた。
 それから従兄弟のことを愚痴り始めるハリーに、思わず笑う。ハリーってとっても面白いやつだ。

「ヒキガエル見なかったか?」

 ノックもなしに扉を開けたのは、髪を背中まで伸ばした少年だった。喋り方がつっけんどんで、ちょっと苦手なタイプかもしれない。
 聞いてもいないことまでペラペラと喋りだすその男――ハーマイオニー・グレンジャーに苛立ちが積もる。

「自分のことを調べるか調べないかはハリーの勝手だろ。そういうの、余計なお節介っていうんだ」
「私は思ったことを言っただけだ」
「君って頭がカッチカチだよね。パーシーそっくり」

 話せば話すほど苛々してくる。さっさと出ていってくれないかと睨んでいたら、またもや来客らしい。三人の男子がコンパートメントに現れた。ドラコ・マルフォイと名乗る偉そうな態度の奴もハーマイオニーと同じくらい苛々する奴だ。私の家族を馬鹿にするドラコに、ついに堪忍袋の緒が切れる。

「武器よ去れ!」

 十回に一回も使うことの出来なかった武装解除の呪文が見事発動したのは感情が昂ぶってたせいかもしれない。武器は持っていないが反動で尻餅をついたマルフォイを見下ろすと脱兎の如く逃げていく。ざまあみろ。

「わあ、凄いよヘンリー!」
「凄いだって? こんなところで魔法を使っていいと思ってるのか」
「なに? 君も同じ魔法をくらいたい?」
「野蛮な女だ」

 ピシャリと扉を閉めていったハーマイオニーにあっかんべーをする。もう二度と会いたくないものだ。

120401
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