ナルト双子

 木の葉隠れの里で忌み嫌われている化け物、ナルトが大嫌いだった。みんなに冷たい目を向けられるのは当然だと思っていたし、ナルトが自分の兄であるというのは、私の一番の恥である。

「ナルト!? ……もう、なにしてるのよ」
「へへっ、ちょっと転んじまった」

 ピンク色の女の子の隣で鼻の下をこするナルトは幸せそうに笑う。その笑顔を壊したくてたまらなかった。ナルトなんて、いなくなってしまえばいいのに。
 女の子がナルトの服の汚れを叩いてやると、ナルトは嬉しそうに顔を緩ませる。憎らしいその顔をそれ以上見たくなくて踵を返そうとすると、それまで女の子に夢中だったナルトがようやく私の存在に気づいたのか、ニッと笑い手を振ってきた。「ヘンリー!」名前を呼ぶナルトの声を聞こえぬふりをしてナルトのいる方向とは逆に足を動かす。
 聞こえなかったのか? と後ろで不思議そうな声を出すナルトを心の中で罵倒しながら足を進めた。
 くだらない、くだらない、死んでしまえ、死んでしまえ……化け物め。

「まだ、そんなことを言っているのか」

 顔を上げるとそこにはサスケがいて、うっかり心の声を漏らしていた口に手で蓋をしながら目の前の人間を睨みつける。いくら睨んでもまったくこたえた様子のないサスケは、私の隣に並んで歩いた。私が歩調を緩めればサスケも歩調を緩め、早足をすれば早足をするサスケをまた睨む。けれどサスケは、これっぽっちも気にしなかった。

「いい加減ナルトのことは諦めろ」
「嫌よ。私はアイツを殺すまで呪い続けてやるんだから」
「そうじゃない。ナルトに依存するのを止めろと言っているんだ」
「……はあ? なにそれ」

 私はナルトに依存なんかしていない。ナルトを気にかけるのは嫌いだからであって、それは依存ではない。サスケの言葉に眉を寄せ、足を止める。同じように足を止めたサスケは、手を伸ばして私の髪を撫でた。お前には、俺がいる。わけのわからないことを言うサスケの手を振り払い、背を向ける。小刻みに震える肩を無視して歩き出した私を、サスケが追うことはなかった。

130121
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