シリウス1 シリウス・ブラックがハッフルパフの女子に告白をしたという事件が学校中に広がる。たかが告白で“事件”となってしまうくらい、シリウスは有名だった。 「口に汚れがついてるぜ」 布巾で優しく汚れを拭ってくれるシリウスは、いつも私のためにあれこれしてくれる。こんな出来た彼氏が自分の恋人だなんて、一週間経った今でも信じられない。 だからか、シリウスが浮気をしていると噂を聞いたときも「ああ、そっか」とすんなり受け入れてしまった。 シリウスは相変わらず優しいし、気も利く。浮気相手を優先して私を蔑ろにすることもない。だから浮気相手のことを気にしなかったし、浮気という噂自体が嘘なんじゃないかと思ってしまった。 「やあだ、シリウスったら」 廊下の真ん中で抱き合う男女に目が釘づけになる。シリウスと、美人な女の子だ。私なんかよりよっぽどお似合いだと思った。 私に気付いたジェームズが焦ったように「あれは違うんだよ、ヘンリー!」と気を遣ってくれるので、なんでもないかのように笑ってみせる。……いや、本当になんでもないことなんだ。むしろ私に付き合ってくれていたシリウスこそが幻だ。 「ヘンリー、泣かないで」 ジェームズの言っていることがわからず顔を擦ってみると、涙が手を濡らす。頬を伝う涙をハンカチで拭うと、それ以上涙が零れてくることはなかった。 130104 しおりを挟む/目次 [top] |