恋する魔法

 セドリックとの関係が変わったのは最近だった。セドリックの部屋に訪れた私はお茶の用意をする彼を手伝うわけでもなく、床に荷物を転がしてベッドに腰を下ろす。窓の外に視線を移し暫くした頃、紅茶とお茶菓子をセドリックが運んできた。お礼も言わずにカップを口に付ける私を怒るどころか笑顔で眺めているセドリックが気にくわず、熱い紅茶を彼に投げる。

「……熱い。舌を火傷したじゃない」

 言い訳するように零した言葉に謝罪をしてくるセドリックに胸が痛む。なんでセドリックはこんな最低な女を家に招くのだろう。

 幼馴染みだった彼が私に告白をしてきたときは驚いたが、セドリックみたいな素敵な人が私を好きになるなんてありえないとすぐに現実を見た。私を好きだと繰り返すセドリックは誰かにおかしな魔法をかけられたらしく、だが、魔法の使えない私には彼にかかった魔法を解いてやることはできず、それならば徹底的に冷たくして嫌われてしまおうと思ったのだが、魔法の効力が強く上手くいかない。

「どうすれば魔法が解けるのかしら」

 紅茶を片付けたセドリックが私の隣に腰を下ろし肩に腕を回してくる。頬やこめかみに好き勝手にキスをしてくるセドリックを無視して思考の波に浸っていると彼の手が衣服の中に滑り込んできた。ぞわりと全身が逆毛たち力の限りセドリックを突き飛ばす。解放された自分の体を抱き締めながら家に帰ろうとバッグを手に取るとその手をセドリックに掴まれる。

「ごめん。もうしないと誓うから帰らないで」
「…………」
「離れたくないんだ」

 縋るような目で私を見るセドリックが体を寄せてくる。無言で背中に腕を回すと彼はとても嬉しそうに笑って額に口付けを落とした。涙が零れそうになった。

120909
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