ムーヌルイの言葉を真に受けたわけではないが、それとなく三大魔法学校対抗試合についてセドリックに聞いてみると、もうすでに名前を入れたと言っていた。これじゃあどっちにしろ手遅れね、と肩を竦めると不思議そうにセドリックが首を傾げる。まさかムーヌルイの言っていたことをセドリックに言えるはずもなく適当に誤魔化す。(自分が死ぬ、なんて例え嘘でも気分がよくないだろう)

「ヘンリー、どうしたんだい?」
「?」
「そわそわしてる」

 セドリックに指摘され、ようやく自分の落ち着きのなさに気づかされた。信じたわけではないけれどムーヌルイの言葉が胸にわだかりを生み、嫌な予感までしてきたのだ。もしセドリックが死んだら――

「ヘンリー……やっぱり様子がおかしい。具合が悪いのかい?」
「……ねえセドリック、私もゴブレットに名前入れてみる」
「ゴブレットって……選手になりたいのかい?」

 驚いたように言うセドリックに頷いてみせると、少し悩むような顔をしてから頷いた。

「ヘンリーは確かに優秀だからね。でも、選手の座は渡さないよ。……って言っても、選ぶのはゴブレットだけど」
「ふふ、それまではライバルね」

 どちらが選ばれても恨みっこなしだ、というセドリックを見てようやく頭にかかったモヤがとれた気がする。首を縦に動かして頷くと、セドリックは笑みを浮かべて私の頭に手を乗せた。





 代表選手を決めるゴブレットにみんなの注目が集まる。もちろん私も意識を全部持っていかれ、口から心臓が飛び出るのではないかというほど緊張していた。ダンブルドア校長先生が読み上げていく言葉を一字一句逃さないよう神経を尖らせ、いよいよホグワーツの代表選手の名前が読み上げられる。

「ヘンリー・工藤」

 間違いなく私の名前が呼ばれ、隣のアイリスに確認を取るように視線を送ると、彼女は驚いたように固まっている。……そういえばアイリスに名前を入れたことを言っていなかった。
 一番の親友にこんな重要なことを言うのを忘れるなんて余程自分は余裕がなかったのか、と苦笑し、反対隣に座っている同級生に促され別室に移動する。移動をするときにセドリックに視線をやったが、彼は難しい顔をして私を見ることはなかった。
 なぜかハリーまで代表選手に選ばれたことに眉を寄せるも、寮に戻るとみんなに歓迎をされ控えめに笑みを浮かべる。

「なんで名前を入れたこと黙ってたのよ」
「でも、グリフィンドールから二人も代表選手が選ばれるなんて名誉だわ!」
「おめでとう、ヘンリー!」
「頑張れよ」

 右からも左からもかけられる声に萎縮するもアイリスが強く背中を叩いて「おめでとう」と言ってくれたのは嬉しかった。
 こうして私は三大魔法学校対抗試合のホグワーツ代表選手となったのだ。

120703
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